コロナ感染急拡大に中国政府は後手後手の対応
消費を支えるバロメーターとなるヒトとモノの流れを鉄道輸送量で比較してみる。
貨物は19年以降、安定推移しており、新型コロナ禍に伴う生産調整やサプライチェーン寸断などのダメージから脱却しつつある。一方、旅客はアップダウンが激しい。感染が落ち着いた21年春から夏にかけて輸送量が増えた一方、感染再拡大に伴う都市封鎖実施、政府による行動制限(春節時の帰省自粛要請「就地過年」など)が移動の大きな妨げになっている。「モノは動くがヒトは動かない」状態とでも言えよう。
一方、政府も対策を打っている。ゼロコロナ政策の一部調整(11/11発表、濃厚接触者の隔離期間短縮など)を受ける形で、文化旅遊部は同15日、省を跨ぐ旅行の規制緩和方針を示した。
同18日にはコンサートなど大型イベントの人数制限取り止めを発表したほか、劇場や娯楽施設などのコロナ対策を改めて規範化し、旅行・文化芸術分野の活動正常化を後押しする方向に舵を切った。
ただ、時を同じくしてコロナ感染が急拡大し始めた。全国の1日当たり新規感染者数は、11月10日に1万人、15日に2万人の大台を突破し、23日には3万人を超え過去最多を更新。各自治体はやむを得ず、大規模PCR検査の実施や行動制限の再強化に動いている。
上海市は11月24日から、市外からの来訪者に対する行動制限(来訪5日未満の者はレストランや商業施設など公共施設への立ち入り禁止など)を開始した。安徽省、江西省、河南省、湖南省などの一部都市でも同様の措置が取られている。現地では出張や観光機運が急速にしぼんでおり、移動には細心の注意が求められるようになった。
このような措置がいつまで続くかは未知数だが、仮に春節(旧正月、今回は23/1/22)前後まで解除されない場合、今冬の消費はかなり冷え込むことが予想される。悪い話ばかりになってしまうが、これが中国の現状である。
中国消費リバウンドのカギは「春節の政策動向」か
もっとも、コロナの感染状況が落ち着きさえすれば、消費は「リベンジ」とまでは行かなくとも「リバウンド」は見られるだろう。海南島の免税品販売は20年後半から22年初頭にかけて大きく成長しており、旺盛な消費ニーズはうかがえる。
足元では都市封鎖や行動制限で観光客・販売額ともに減退しており、現地視察を行った10月下旬時点でも消費の戻りは緩慢との印象を受けたが、書き入れ時の春節シーズンの販売が今後の試金石となろう。その意味も含め、前述した各地での規制動向が大きなカギになってくる。
奥山 要一郎
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 所長
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