(※写真はイメージです/PIXTA)

孫の誕生は、祖父母にとって大きな喜びです。定年後に時間の余裕があれば、子ども世帯を支えたいと考える人も少なくありません。しかし預かりや送迎、食事の準備が日常化すると、老後の暮らしは大きく変わります。孫がかわいいからこそ断れず、気づけば祖父母自身の生活が後回しになることもあるようです。

「今日だけお願い」の一言で始まった、孫中心の毎日

誠治さん(仮名・65歳)と妻の美智代さん(仮名・64歳)は、長年の会社員生活と子育てを終え、ようやく夫婦二人の時間を楽しめると思っていました。

 

夫婦の年金収入は月34万円ほど。貯金は約5,000万円あり、住宅ローンも完済済みです。退職後は旅行や趣味を楽しみながら、無理のない暮らしを送るつもりでした。

 

生活が変わり始めたのは、長女が二人目の子どもを出産した頃です。長女夫婦は共働きで、保育園の送り迎えや急な発熱時の対応に追われていました。最初は「今日だけお願い」と頼まれる程度で、誠治さん夫婦も喜んで引き受けていました。

 

「助かる。本当にありがとう」

 

長女にそう言われるたび、夫婦は「まだ自分たちにも役割がある」と感じていました。孫と過ごす時間も楽しく、家がにぎやかになることは嬉しいことでした。

 

しかし、その頻度は少しずつ増えていきます。平日の送迎、病児保育の代わり、週末の預かり、習い事への付き添い。気づけば、夫婦の予定表は孫の予定で埋まっていました。旅行の計画を立てても、長女から「その週はどうしてもお願いできない?」と言われると断れません。

 

孫を預かっていた、とある夕方のこと。兄弟げんかが始まり、下の孫が泣き、上の孫は「帰りたい」と叫びます。美智代さんは夕食の支度をしながらなだめ、誠治さんは散らかった部屋を片付けていました。

 

そのとき、長女から「少し遅くなる」と連絡が入ります。美智代さんは台所で小さくつぶやきました。

 

「逃げ出したいのは私たちのほうでしょう…」

 

誠治さん夫婦は、孫が嫌いになったわけではありません。むしろ、かわいいからこそ無理をしていました。しかし、夫婦の生活は明らかに変わってしまいました。美智代さんは友人との予定を断ることが増え、誠治さんも趣味のサークルを休みがちになりました。夜には二人とも疲れ切り、会話も少なくなっていきました。

 

 

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