初孫が男の子で大歓喜
Aさんは60歳で定年を迎え、もともとは再雇用で働く予定でした。しかし、その時期にちょうど、1年前に結婚した長男の嫁の妊娠・出産が重なります。生まれた子どもは、Aさんにとって待望の初孫。しかも男の子だと知った瞬間、Aさんは「でかした! 跡継ぎだ」と、1人で歓喜の声をあげました。
実は、Aさん自身も長男です。下に妹が2人いますが、Aさんの両親は昔ながらの家父長制を引き継いだ考え方を重んじる人たちでした。「長男が家を継ぐ」と育てられたAさんは、実家で常にVIP待遇。跡継ぎのため厳しく育てられましたが、その分、可愛がられたのを覚えています。その象徴ともいえるのが学歴で、Aさんだけが大学へ進学し、妹たちは高校卒業と同時に就職するという具合でした。
自分と同じ「長男のなかの長男」が生まれた嬉しさから、Aさんは現役続行の予定をあっさりと返上し、早々の完全引退を決意します。Aさんの長男は家族とともに少し離れた場所に暮らしていたこともあり、「退職金で二世帯住宅にリフォームするから、うちに来なさい」と呼び寄せました。大人しい性格の長男は、幼いころから父の敷いたレールを素直に歩んできたため、今回も反対することなく妻を説得。こうして、二世帯同居が始まったのです。
嫁との「約束」を無視して始まった、溺愛孫ライフ
Aさんの息子夫婦は共働きです。嫁は、育児休業を取得していましたが、子が1歳になるタイミングで復職するため、近くの保育園を探したものの、どこにも空きがありません。保育園探しに困っていると息子から聞いたAさんは、ここぞとばかりに胸を叩きました。
「孫の心配はしないで大丈夫だ。じぃじとばぁばに任せなさい!」
息子の嫁は、「甘やかし過ぎないか心配。保育園で集団生活を学ばせたいのですが」と躊躇いましたが、Aさんの熱意に押された息子から説得され、しぶしぶ了承。ただし、空きができたらすぐ保育園に入れる、必要以上にお菓子や玩具を買い与えない、といったルールを決めました。
しかし、念願の「跡継ぎ」との生活に舞い上がるAさんは、そんな嫁の言葉を右から左へ聞き流します。平日の昼間は、Aさんの妻が食事などの家事を担い、Aさんがひたすら孫を可愛がるという、“溺愛孫ライフ”が幕を開けました。
当時、孫はまだ1歳。ようやく一人で歩き始めたばかりで、目が離せない年ごろです。Aさんは当時61歳。体力にはそこそこ自信があったものの、頻繁な抱っこや、小さな孫の目線に合わせて身を屈める動作は、想像以上に老いた腰へと負担をかけていきました。
それでも孫が可愛い一心で、公園遊びに疲れると、毎日のようにお菓子や玩具を買いに出かけます。特に夏場や雨の日は、エアコンの効いたショッピングセンターに連れていくと孫も大喜びです。


