(※写真はイメージです/PIXTA)

普段からかかりつけの薬局があれば、重複投薬を防ぐことができます。薬の相談もしやすいでしょうし、あなたが何を飲んでいるかもよくわかって説明してくれます。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

高齢者は薬をいっぱい飲んでいる

■医者の言いなりになるな――自分を守るのはあくまで自分

 

70歳を過ぎた人が集まると、ひとしきり薬の話題、というより薬自慢が始まります。

 

「コレステロールを下げる薬を飲んでいる」
「血圧の薬は2種類出ている」
「血液サラサラの薬を飲んでいるから、納豆を食べられないんだ」

 

一般的にこんな話題が多いでしょう。薬を飲んでいないと肩身が狭いくらいです。「その年で健康なんて、どこか悪いんじゃないか」というジョークがあるくらいです。

 

さまざまな健診を受けて異常が出れば、まずは薬が出ます。「生活習慣病」といわれるくらいですから、生活習慣の見直しから始めないといけないのに、とりあえず薬です。

 

もし、血圧やコレステロールが下がったり安定したりしていても、「薬のおかげで安定しているのだから、薬は飲み続けましょう」と医者は言います。「そうなのかな」と、あなたは腑に落ちない気持ちでしょうが、あえて疑問は言いません。医者に質問しづらいのです。

 

医者は「薬を出します」と言うと、パソコンのカルテに顔を向けてしまい「もう終わりですよ」という雰囲気を出します。患者は「ありがとうございました」と言って引き下がります。こういう経験をされた方も多いでしょう。

 

こういった医者ばかりではないと思いたいのですが、混んでいる病院では仕方のない場合もあります。とにかく患者さんをたくさん診ていかなければならないからです。それはよくわかりますが、こんな調子で薬は何年も変わらないということはよくあります。

 

そうこうするうちに、年々薬の量は増えていっていませんか。

 

主治医とは、薬の処方以外に話はできていますか。

 

「調子はどうですか」
「変わりないです」
「じゃあ、2か月分薬を出しましょう」

 

これで、終わりになっていないですか。

 

いつもの内科の医者に「胃が最近むかむかして」と言えば、「胃薬出しましょう」となります。空腹時なのか、食べたあとなのかは聞いてくれません。詳しく診てほしかったら「胃腸科に行きなさい」となってしまいます。

 

日本には、総合的に診てくれるホームドクターの役割が根づかないでいます。クリニックの多くは専門領域ごとに分かれています。内科で開業している医者も、実はある臓器の専門家であることが多いはずです。そのため、あなたは、たいしたことのない症状でもあちこちの病院に通うことになります。


 
60代を過ぎたら、自分なりのホームドクターを探しておくといいでしょう。

 

そのときの基準は、薬のことに聞く耳を持ってくれる医者です。

 

「血圧も安定しているし、薬を減らしてみたい」と相談すれば、「1錠にしてやってみますか」とコミュニケーションがとれる医者が理想です。

 

ただ薬を飲んでいても長生きはできません。薬の弊害というものは必ずあります。自分の身体の調子をいちばん知るのは、あなたです。その自分の調子を医者と話し合うことができるのが理想です。

 

自分を守るのは自分です。医者の言いなりにならずに、自分の意見や希望を話していってください。

 

医者も変わっていかなくてはいけないのですが、患者も変わっていかないと医者も変われないのではないかと考えます。

 

次ページ「かかりつけ薬局」が自分の身を守る

本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

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