(※写真はイメージです/PIXTA)

普段からかかりつけの薬局があれば、重複投薬を防ぐことができます。薬の相談もしやすいでしょうし、あなたが何を飲んでいるかもよくわかって説明してくれます。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

「かかりつけ薬局」が自分の身を守る

■かかりつけの薬剤師を持とう

 

ところで、かかりつけの薬剤師さんはいますか。

 

ほとんどの人は、薬局は医者が処方した薬を受け取る場所としか考えていません。

 

だから、内科、整形外科、胃腸科クリニックと別々の病院へ行くと、それぞれの病院の近くに薬局があって、それぞれの薬局で薬をもらってしまう。そういう人が多いような気がします。

 

薬を取り巻く状況はだいぶ変わってきました。

 

一例を挙げると、国の地域包括ケアシステムの中で、薬局の役割が大きくなってきました。

 

たとえば、ある認知症の女性に薬の飲み忘れがありました。

 

内科、整形外科など、複数の病院から薬が出ていました。薬のシートもいくつもあります。認知症でなくても、数種類の薬をきちんと飲むのは大変です。

 

そこで、ケアマネジャーさんは、薬局を一か所に決め、処方箋をすべてその薬局へ持っていくことにしました。「薬の一包化」といって、薬局では、シートから出し、朝昼夜飲む分をひとつの袋に入れます。袋には「7月23日 朝」というふうに印字してくれます。また、病院の受診日が違うと微妙に薬の数が合わないことがあるので、余った薬は薬局で預かってくれます。

 

「お薬カレンダー」も、いまは薬局で売っています。薬剤師さんが自宅を訪問し、お薬カレンダーに薬をセットしてくれることもあります。

 

いまは薬局もここまで動いてくれます。これは無料奉仕ではなく、「薬剤管理」等の名目で報酬が算定されますが、そんなに高くない金額が上乗せされるだけです。

 

薬が管理できない認知症の方だけではなく、普段から馴染みの薬剤師さんがいると相談がしやすいことがあります。医者には聞けなかった薬の副作用なども教えてくれますし、飲み合わせにも気をつけてくれます。

 

かかりつけ薬局を持つことは、多剤処方や重複投薬を防止することにもなります。

 

みなさんが持つお薬手帳は、薬剤の管理のために利用されるものなのですが、忘れてきたり、ひとりが何冊もお薬手帳を持っていたりして管理できていないのが現状です。いずれIT化が進み、個人の薬剤情報の一元管理も進んでいくと思いますが、いまだ途上であることはたしかです。

 

ある方は、腰が痛いと内科でも訴えるので痛み止めが出ていました。整形外科から薬ももらっているし注射もしています。そのことをきちんと内科の医者に説明をしていなかったのです。薬局もそのたびに違いましたし、お薬手帳は内科用と整形外科用に2冊持っていました。これでは多剤処方されていると気がつきません。

 

この方は、あきらかに痛み止めの飲み過ぎをしていました。そうして「最近フラフラする」と言っていましたが、とうとう転倒して骨折しました。

 

入院するときに「いま飲んでいる薬をぜんぶ持ってきてください」と言われ、家族が持っていくと、「あらっ、こんなに飲んでいたのですか」と驚かれたそうです。

 

「飲ませたのは医者じゃないか」と文句を言いたくなりますが、薬に関して言えば、医者より薬剤師が専門家です。

 

普段からかかりつけの薬局があれば、重複投薬を防げます。薬の相談もしやすいでしょうし、あなたが何を飲んでいるかもよくわかって説明してくれます。認知症になってもフォローしてくれるでしょう。

 

便利だからという理由で病院の近くの薬局を利用するより、家の近くで評判のいい薬局を探してみてください。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

 

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