ニューヨークでは「赤信号でも信号を渡る」のが当たり前の理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

ニューヨークではある光景に出くわします。中心部のマンハッタンで幅が狭い道路では、ほとんどの歩行者が赤信号でも渡っているといいます。赤信号と認識したうえで、あえて自分の判断で渡っているのです。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)で解説します。

赤信号の歩道を堂々と渡る歩行者

■赤信号を渡ってみた、自分で考えて責任を取る

 

2013年夏、仕事でニューヨークに赴任しました。そこで、ある光景に出くわします。赤信号の歩道を堂々と渡る歩行者たちの姿です。

 

中心部のマンハッタンで幅が狭い道路では、ほとんどの歩行者が赤信号で渡っていました。

 

会社員、観光客、犬の散歩をする市民。みんな、赤信号の歩道をホイホイと通過します。網の目のように縦横に走るマンハッタンの車道の多くは、2車線から4車線でそれほど広くありません。車も歩行者の信号無視の慣行を容認していて、双方、手慣れた感じです。

 

警察官がいてもお構いなく、信号無視する歩行者もいます。信号無視は、車は取り締まられますが、マンハッタンでは歩行者は大目に見られている印象でした。

 

私は日本にいる時、歩行者の赤信号では渡りませんでした。それがルールだからです。特に小さな子どもがその場にいる時は、心して信号を守っていました。自分の子どもにも赤信号は渡ってはいけないと言ってきました。だから、その光景に少々驚いたのです。

 

しばらくすると、あることに気付きました。よく見てみると、赤信号で渡る歩行者は、自分の目で左右の様子をよく見てから渡っています。自動車や自転車が来ないことをしっかり確認して、渡っているのです。さらに、よく観察すると、青信号でも左右をしっかり確認して渡る歩行者が多いのです。これなら、車が信号を無視して歩道に突っ込んできても回避できるかもしれないと感心しました。

 

「歩行者は信号が赤か青かよりも、渡っても大丈夫な状況かどうかを自分自身で確認しているのではないか」

 

ニューヨークで暮らす知人に聞いたら、こう言っていました。信号の色は関係なく、左右を見て安全なら渡る。安全でないなら渡らないということのようです。交通ルールはルールとして踏まえつつも、許される限り、合理性と自己責任で自考するアメリカ人の姿を見た思いです。

 

「車も来ないのに、数メートルの道路を渡らないのは合理的ではない。ばかばかしい」

 

歩行者に理由を聞いたら、きっとこんな答えが返ってくるのでしょう。

 

「信号無視」なのではなく、赤信号と認識したうえで、あえて自分の判断で渡っている、と言った方が正確なのかもしれません。

 

やがて、私もニューヨーカーの人の流れに交じって、赤信号の歩道を渡ってみました。左右をしっかり確認しながらです。妙な気分です。赴任から1年後、日本にいた子どもたちが遅れてニューヨークに引っ越してきました。日本では、信号は守れと厳しく言っていた手前、この信号無視の風景をどう説明しようか悩みました。その結果、子どもたちにこう言いました。

 

「自分で考えてどうするか決めればいい」

 

自考のススメです。

 

ニューヨークの赤信号の体験は、私の思考に影響を与えました。

 

信号無視やルール違反を推奨しているのではありません。常識やルールとどう向き合うのか。ルールの先にある実利、合理性とは何か。ルールに単に支配されるのではなく、どう自己判断するのか、自分で考えて決めることに大きな意味があるということです。

 

そして、自分で考えて決め、行動したことには自分で責任を負うということです。それこそが自考であり、自分の人生を生きるということなんだろうと思います。日本に帰国後、私は青信号の歩道でも左右を確認して渡るようになりました。

 

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    ジャーナリスト

    1964年、群馬県高崎市生まれ。日本経済新聞記者を経て1991年から共同通信記者。山口支局、大阪支社、経済部。阪神淡路大震災、大蔵省接待汚職事件、不良債権問題、金融危機など取材。2000年からテレビ朝日記者。経済部、外報部、災害放送担当(民放連災害放送専門部会委員)、福島原発事故担当、ANNスーパーJチャンネル・プロデューサー、副編集長、記者コラム「報道ブーメラン」編集長、コメンテーター、ニューヨーク支局長、アメリカ総局長(テレビ朝日アメリカ取締役上級副社長)。トランプ氏が勝利した2016年の米大統領選挙や激変するアメリカを取材。共著『自立のスタイルブック「豊かさ創世記」45人の物語』(共同通信社)など

    著者紹介

    連載自分の頭で考える、自分のやり方を考える

    本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社、2022年2月刊)より一部を抜粋し、再編集したものです。

    自考

    自考

    岡田 豊

    プレジデント社

    アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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