クリミア戦争でロシアの戦費調達を支援した英国の驚きの行動

世界から見た戦争とお金④

クリミア戦争でロシアの戦費調達を支援した英国の驚きの行動
(※写真はイメージです/PIXTA)

かつてロシアは自国でクリミア戦争の戦費を調達できず、英国の金融街シティで調達せざるを得ませんでした。そもそも敵国である英国が、ロシアの戦費調達を助ける合理的な理由がありません。英国がとった驚きの行動は。経済評論家の加谷珪一氏が著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』(祥伝社黄金文庫)で解説します。

英国が世界の支配者になれた理由

■クリミア戦争で英国が取った驚くべき行動

 

ちなみにこうしたロシアの状況は昔からあまり変わっていません。実はロシアは、以前にもクリミア半島をめぐって紛争を起こしています。ナイチンゲールが活躍したことでも有名なクリミア戦争(1853年~1856年)です。

 

クリミア戦争は、ロシアの南下政策をめぐって、ロシアとトルコの間で発生した戦争で、実質的にはトルコを支援する英・仏とロシアとの戦争となりました。クリミアが戦場になったという点や、ロシアとトルコが対立している点においても、今の状況と非常に類似性があります。

 

当時も今も戦争には巨額の費用がかかりますが、ロシアは今回と同様、経済面で苦境に立たされました。ここで驚くべき事態が発生します。ロシアは自国でクリミア戦争の戦費を調達できず、何と敵国である英国の金融街シティで調達せざるを得なかったのです。

 

これは普通に考えるとおかしな話です。そもそも敵国である英国が、ロシアの戦費調達を助ける合理的な理由がありません。しかし英国はあえて、自国市場をロシアに開放し、資金調達を支援しています。

 

英国は英国で、国内で賛否両論がありましたが、ロシアの資金調達を拒絶すればオープンな国際金融市場としての魅力が薄れるとの理由から、あえて、敵国ロシアの資金調達を容認したわけです。

 

英国人は、豊かな経済やグローバルに展開する金融市場の存在が、強力な軍隊に匹敵するパワーを持つことを知り尽くしています。ロシアの資金調達を支援してしまうと、確かに目の前の戦争では不利になってしまうでしょう。

 

しかし、長期的な国家の覇権を考えた場合、自国市場を閉じない方がよいとの判断を行ったわけです。こんなところにも、英国が世界の支配者になれた理由を垣間見ることができます。

 

加谷 珪一
経済評論家

 

 

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本連載は加谷珪一氏の著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』((祥伝社黄金文庫)より一部を抜粋し、再編集したものです。基本的に書籍が出版された2016年当時の記述となっており、各種統計の数字は2016年時点のものです。国際情勢が変化し、追記が必要な部分については、著者注として補足しています。

戦争の値段――教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

戦争の値段――教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

加谷 珪一

祥伝社

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