ロシアは大丈夫か?「戦時インフレ」国債大量発行の戦費調達が破壊する国民生活

戦争と経済にはどんな関係があるのか②

ロシアは大丈夫か?「戦時インフレ」国債大量発行の戦費調達が破壊する国民生活
(※写真はイメージです/PIXTA)

戦争の遂行は、名目上の経済規模を拡大する効果はありそうです。しかし、経済の基礎体力を無視した戦費調達を行った場合には、国民生活を破壊するなど各方面に影響が出てくることになります。経済評論家の加谷珪一氏が著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』(祥伝社黄金文庫)で解説します。

戦争はGDPにどんな影響を与えるか

戦争が経済に与える影響について考えてみたいと思います。基本となるのは先ほど取り上げたGDPの式です。戦争の実施によってこれらがどう動くのか予想することで、経済への影響を分析することができます。

 

Y(GDP)=C+I+G
<個人消費(C)、設備投資(I)、政府支出(G)>

 

■大量の国債発行が投資に影響

 

戦争は基本的に政府が行うので、戦争が発生すると、GDP項目における政府支出(G)が増えることになります。もし政府支出が増えても、投資や消費に影響がなければ、戦争で使った費用の分だけ、GDPが増大することが予想されます。戦争が経済にとってプラスの効果をもたらすという話をよく耳にしますが、この話はこうしたメカニズムから来ているわけです。

 

ただ、戦争の遂行が現実の経済に与える影響はもっと複雑です。

 

戦争の遂行には巨額の資金が必要となりますが、多くの場合、政府の借り入れという形で調達されます。これが経済全体に様々な影響を及ぼすことになるわけです。

 

よくいわれているのが、「クラウディングアウト」と呼ばれる現象です。政府による財政出動が行われると、民間の投資を抑制してしまうというメカニズムが働きます。

 

この話は財政出動の是非について議論する際によく用いられるのですが、政府による支出という点では戦争の遂行も同じです。

 

政府が戦争遂行のために国債を大量に発行すると、国債が余りぎみとなりますから、金利が上昇することになります。

 

金利が上がってしまうと、企業は銀行から資金を借りにくくなります。どうしても必要な設備投資は実施される可能性が高いですが、判断に迷っているような投資案件の場合、金利の上昇によって中止となるケースも出てくるでしょう。この結果、国内の設備投資が抑制されるという現象が発生します。

 

設備投資の抑制は、GDPの項目における投資を減少させますから、経済成長にはマイナスの影響が出てくる可能性があるのです。もちろん軍事費の出費によってGDPはかさ上げされていますが、軍事費の増加分だけ、そのままGDPが増える保証はないわけです。

 

また投資の抑制には長期的な影響もあります。先ほど解説したように、投資というものは、現時点のGDPにも貢献しますが、何より将来のGDPの原資となるものです。

 

とりあえずは、投資の減少分よりも戦争による支出の増加の方が大きいですから、短期的にはGDPが増大し、経済が成長したように見えます。しかし、今後の経済成長に必要な投資まで抑制してしまった場合、長期的な経済成長に影響を及ぼすことになるかもしれません。

 

こうした戦費の調達がすべて増税で行われた場合(増税した分をそのまま軍事費の支出に回すと仮定)でも、経済学の理屈の上ではその分だけGDPが増えることになります。

 

しかし、これも先ほどの議論と同様、その支出が将来の成長に対してどのような影響を与えるのかという問題が出てきます。戦費が具体的にどのような支出になったのかによって、最終的な結果は変わってくるでしょう。

 

多額の戦費をすべて増税で賄うというのは、現実的には考えにくいことです。国債発行による調達と増税がセットになる可能性が高いですから、やはり国債発行による影響を中心に考えた方がよいでしょう。

 

次ページ経済体力を無視した戦費調達の恐怖

本連載は加谷珪一氏の著書『戦争の値段 教養として身につけておきたい戦争と経済の本質』((祥伝社黄金文庫)より一部を抜粋し、再編集したものです。基本的に書籍が出版された2016年当時の記述となっており、各種統計の数字は2016年時点のものです。国際情勢が変化し、追記が必要な部分については、著者注として補足しています。

戦争の値段――教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

戦争の値段――教養として身につけておきたい戦争と経済の本質

加谷 珪一

祥伝社

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