(※写真はイメージです/PIXTA)

「司法書士」といえば、まさに相続のプロというべき資格の一つ。しかし佐伯知哉氏(司法書士法人さえき事務所 所長)は、「生前贈与」の相談は結局「しない」という選択に行きつくことが多く、あまり司法書士の仕事にならないといいます。その理由を、生前贈与の問題点や、生前贈与の必要性の両面から見て行きましょう。

生前贈与のよくある問題(2)贈与の意思

■生前贈与には「贈与契約」が必要。親は契約締結できる状態か?

次に、贈与の意思の問題があります。

 

まずは、相手方が贈与契約を締結できる状態にあるのかどうか?という問題です。

 

たとえばAさんの不動産をBさんに生前贈与する場合、その不動産の名義をAさんからBさんへと変更することになります。

 

ただし、これは単なる登記簿の書き換え作業ではありません。特に理由もなく書き換えることはできないため、AさんからBさんへ無償で名義変更する、つまりタダで名義をあげる場合には、AB間できちんと「贈与契約」を締結する必要があります。

 

親が認知症などで判断能力が低下しており、契約内容を理解できない場合は贈与契約を締結することができません。「親名義の不動産を子の名義に変えたい」という相談はお子さん側から寄せられることが多いのですが、よくよくお話を聞いてみると、肝心の親が施設で寝たきりだったり、お話しするのも難しい状態だったりして、結局贈与できないこともあります。

 

繰り返しますが、贈与による名義変更は、単なる登記簿の書き換え作業ではありません。きちんと契約を結ばなければならないというのが重要です。

 

他にも、もらう側として子どもが主導で動いていたら、親にはそもそもあげるつもりがなかったというケースもあります。

 

贈与契約は双方の「あげます」「もらいます」という意思の合致があって初めて成立するものですから、当然、どちらか一方の意思が欠けていた場合には成立しません。親が「あげる」と言っていても子が「もらう」と言わない場合ももちろん贈与契約は成立せず、親が勝手に子の名義に書き換えることもできないようになっています。

 

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【贈与の意思の問題】

●A→Bへの名義変更が無償で行われる場合は、AB間で「贈与契約」を締結する必要がある

●すでに親の判断能力が低下していると贈与契約を締結できない

●もらう側の子が希望しても、親に贈与する意思がなければ贈与契約を締結できない

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以上が、生前贈与でよくある問題です。次に、その生前贈与は本当にやる意味があるのか?という問題を見て行きましょう。税金の問題も贈与の意思にも問題がないものの、結局「生前贈与をする意味がないパターン」も結構多いのです。

 

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