【2022年の物流施設の利用動向】なぜテナント企業の「床面積拡張意欲」が高まったのか?

CBREレポート「物流施設利用に関するテナント調査 2022『強まる拡張と先進化ニーズ』」(2022年6月)より

【2022年の物流施設の利用動向】なぜテナント企業の「床面積拡張意欲」が高まったのか?
(※写真はイメージです/PIXTA)

ダラスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)。2022年に物流テナント企業は床面積の拡張を重視しました。なぜなのでしょうか? 同社リサーチ部門シニアディレクター高橋加寿子氏とディレクター羽仁千夏氏が解説します。

物流業界が直面する課題

世界的なインフレを受けて、物流拠点の運営費用は上昇

物流拠点の運営費用の見通しについて聞いたところ(図表12)、主要なコスト項目である「建物(不動産)コスト」、「輸送・配送費」、「人件費」(それぞれ平均で総費用の約3割を占める、図表13)に関しては、多くのテナント企業が今後も上昇を見込んでいることがわかった。「建物(不動産)コスト」については、一昨年および昨年よりもさらに多い68%の企業が「いまよりも上がる」と回答。「輸送・配送費」と「人件費」については、いずれも昨年を上回る90%ものテナント企業が「今よりも上がる」と回答した。

 

[図表12]運営費用の今後3年間の見通し

 

[図表13]物流拠点運営費用の配分

 

最近では世界的に物価が上昇している。昨年の段階では、コロナ危機後の経済活動再開とサプライチェーンの混乱を背景とする人員および物不足を受けて、主に米国でインフレ率が加速した。当初はコロナからの回復局面での一時的な現象とみられていたが、ウクライナ情勢や中国の「ゼロコロナ」政策などを背景に、インフレ率は世界的に歴史的高水準で推移している。

 

日本では、消費者物価や賃金は大きく上昇はしていないものの、円安も相俟って輸入品を中心とした原材料価格が高騰しており、企業業績を圧迫するリスクが高まっている。本テナント調査は3月に実施したものであり、直近の状況がどの程度反映されているかは不明だが、先行き不透明感が強いことを踏まえれば、テナント企業にとって効率化によるコストコントロールが一層重要かつ喫緊の課題となっていることは間違いない。

 

物流施設内のテクノロジーの活用

■人員削減と倉庫面積増加のバランス

物流施設内でのテクノロジーの採用に関する質問では(図表14)、「倉庫管理システム(WMS)」をすでに導入している企業が全体の66%を占めており、もっとも割合が高かった。

 

[図表14]物流施設内のテクノロジーの導入と見通し

 

一方で、「商品ピッキングシステム」、「仕分け搬送システム」、「無人搬送機(AGV)」、「オペレーション可視化システム」を導入している企業は、いずれも全体の2、3割程度にとどまっている。しかし、これらのシステムなどについては、全体の2、3割程度の企業が今後3年間での導入を検討していると回答しているため、採用が進む余地は大きいといえそうだ。

 

また、テクノロジーの導入による倉庫面積と作業員の変化について質問したところ(図表15)、52%の企業が「倉庫スペースは増える」と回答した。一方で、「作業員の数は減る」と答えた企業は65%だった。つまり、自動化を進めるためにはより多くの倉庫スペースが必要となる一方で、人員を減らすことができるため、そのコストバランスによって企業はテクノロジーの採用可否を決定することになる。

 

[図表15]テクノロジーの導入で想定される作業員・倉庫面積の変化

 

なお、昨年の結果と比較すると、「作業員の数は減る」と回答した企業の割合は減り、「倉庫スペースは増える」と回答した企業の割合は増えている。自動化を進めても、必ずしも人員を大きく減らせるわけではないと考える企業は増えているようだ。いずれにしても、自動化の進展とともに、それを可能とするスペックおよび床面積を備えた大型物流施設に対する需要は増えるといえるだろう。

 

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※本記事はシービーアールイー株式会社(CBRE)のジャパン特別レポート「物流施設利用に関するテナント調査 2022」より一部抜粋・再編集したものです。
※本文書は貴社の責任と判断で利用いただくものであり、弊社は、貴社又は第三者が本文書に基づいて行われた検討、判断、意思決定及びその結果について法律構成・請求原因の如何を問わず一切の責任を負わないものとします。

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