テナント企業の「拡張ニーズの背景」
■「事業拡大」が引き続き牽引
先の質問に関連して、計画の背景理由について聞いたところ(図表3)、物流企業の実に78%が「事業の拡大」を挙げた。コロナ下の2020-2021年においては、B-to-Bの物量は減少したものの、ECが浸透して宅配業が伸びたことから物流業界の活動は高い水準を維持した。
実際、物流企業上位10社の売上高はここ数年拡大を続けており、今期予想も概ね増収となっている(図表4)。
次に多く挙げられた理由が「拠点の効率的な配置」だった(物流・荷主企業ともに全体の35%)。コスト増や規制強化などを背景に、テナント企業は効率的な物流網の構築には高い関心があると認識される。
■保管量の増加と建物の老朽化
「保管量の積み増し」を理由として挙げた企業も、とくに荷主企業において多かった(23%)。昨今のサプライチェーンの混乱や部材不足を背景に、リードタイムの長い部品・商品を多めに確保する、あるいは顧客向けの在庫を多めに持つといった動きがあることも、その一因として考えられよう。
荷主企業が挙げた理由で注目されるのは「建物・設備の老朽化・使いにくさ」と「耐震性能・BCP対策」で、それぞれ全体の32%と13%が挙げた。自社倉庫の老朽化をきっかけとして物流戦略を見直す企業が増え、最新スペックの物流施設に対する需要が増えることが期待される。
物流拠点戦略「拠点拡張の手段」
■マルチテナント型の高いニーズが継続する可能性
物流拠点の拡張手段に関する設問では(図表5)、物流企業の59%と荷主企業の54%がマルチテナント型物件の賃借を検討すると回答した。
加えて、物流企業の3社に1社が個別ニーズに仕様を合わせたBTS型の賃借を検討していることからも、先進的物流施設を借りるニーズは引き続き高いといえそうだ。また、物流企業の33%が「自社施設建設のため土地を購入」と回答した。より詳しくみてみると、そのように回答した企業のほとんどが「事業の拡大」を物流戦略の背景理由のひとつとして挙げている。事業の拡大を予定している物流企業は、賃貸物件だけでなく、自社開発を含むあらゆる手段での拠点拡張を模索しているようだ。
他方、荷主企業の25%が3PLへの委託による拡張を検討していると回答した(図表6)。別途荷主企業に今後3PLへの委託が増えるかどうか聞いたところ、50%が「現在よりも増える」と回答し、割合としては昨年の44%を上回った。3PLを担う物流企業の事業拡大と拡張意欲が今後も高いままで推移する可能性を裏付ける結果といえるだろう。
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