【2022年の物流施設の利用動向】なぜテナント企業の「床面積拡張意欲」が高まったのか?

CBREレポート「物流施設利用に関するテナント調査 2022『強まる拡張と先進化ニーズ』」(2022年6月)より

【2022年の物流施設の利用動向】なぜテナント企業の「床面積拡張意欲」が高まったのか?
(※写真はイメージです/PIXTA)

ダラスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)。2022年に物流テナント企業は床面積の拡張を重視しました。なぜなのでしょうか? 同社リサーチ部門シニアディレクター高橋加寿子氏とディレクター羽仁千夏氏が解説します。

物流拠点戦略「立地」

■物流集積地・大都市圏が引き続き人気

今後の物流拠点の拡張について、どのような立地・エリアを検討しているのかを聞いたところ(図表7)、もっとも多かった回答が「物流集積地」(62%)と「都市圏内の郊外」(49%)だった。物流集積地や都市圏郊外は新規の供給が多いうえに賃料がリーズナブルであることから、テナント企業がこのような立地で拡張を検討するのは当然ともいえる。

 

[図表7]検討中の物流拠点の立地(複数選択可)

 

■地方都市・中継地点も注目

また、「地方都市、中継地点」を検討する企業が全体の26%と、比較的多かったことが注目される。後述する「2024年問題」への対応も含めて、中継地点となり得る大都市圏以外の立地においても物流施設の需要が高まっていることが示唆される。

 

一方で、「都心部」や「住宅地至近」での拡大を検討している企業の割合は、昨年の調査結果と比べて減少した(昨年調査ではそれぞれ「都心型物流センター」「市内配送ステーション(ラストマイル)」の項目で調査)。川下での物流拠点を拡張する企業の数は昨年と比べると落ち着いたようにも見受けられるが、今年竣工予定の大型都心物件は順調に消化されており、需要は依然として堅調だと認識される。

 

さらに、都道府県別での立地希望を聞いたところ(図表8)、首都圏、近畿圏、および中部圏に集中していることが改めて確認された。ただし、物流業者が主に首都圏と近畿圏での拡張に意欲的であるのに対して、荷主企業は近畿圏と中部圏に相対的に強い関心があるようだ。製造業などの企業が事務所や工場に近い倉庫を必要としている一方、川下を担う物流企業は人口の多い都市部全体での拡張を検討していることが読み取れる。

 

[図表8]物流拠点の希望エリア(複数選択可)

 

物流拠点戦略「建物の設備」

キーワードは引き続き「快適性」「BCP」「ESG」

倉庫の仕様に関する今後の要件について聞いたところ(図表9)、「今後大きくなる、増える」との回答の割合がもっとも高かったトップ3は「空調付き施設の需要」(69%)、「非常用電源」(63%)、そして「環境性能・グリーンエネルギー」(62%)で、昨年の調査結果と変わらなかった。つまり、先進的物流施設の仕様におけるキーワードが「快適性」「BCP」そして「ESG」であることに変わりはない。

 

[図表9]物流施設の仕様に関する要件・要望の方向性

 

従業員がより働きやすい環境を整えようとする動きは、「感染症対策」や「福利厚生施設」の要件が大きくなると回答した企業の割合が高かった(それぞれ50%と41%)ことからも認識される。

 

■BCP

BCPに関して、「免震構造」ならびに「非常用電源」についてニーズが「大きくなる」とした回答者の割合はそれぞれ54%、63%となった。実際、災害対策を背景とした移転ニーズは東日本大震災以降に顕在化している。ここ最近も比較的大きな地震や台風による水害が起きており、BCPに関する企業の意識は再び高まっているとみられる。電力会社は需給がひっ迫した際、あるいは震災などに際して安全を確保するために計画停電を実施していることからも、自然災害の多い日本における非常用電源と免震構造を求める傾向は今後も変わらないだろう。

 

■ESG

ESGについては、「環境性能・グリーンエネルギー」の要件が「大きくなる」と回答した企業の割合が62%と、昨年比で大きく上昇した(図表10)。

 

[図表10]環境性能の要件・要望の方向性

 

また、「小さくなる」と答えた企業は2年連続でゼロだった。ESG施策の優先度は依然として高くはないが(図表11)、今後は高まると考える企業が大半であることが明らかとなった。

 

[図表11]今後3年間に優先ないし重視する施策

 

注目のセミナー情報

​​【減価償却】11月20日(水)開催
<今年の節税対策にも!>
経営者なら知っておきたい
今が旬の「暗号資産のマイニング」活用術

 

【国内不動産】11月20日(水)開催
高所得ビジネスマンのための「本気の節税スキーム」
百戦錬磨のプロが教える
実情に合わせたフレキシブルな節税術

次ページ物流業界が直面する課題

※本記事はシービーアールイー株式会社(CBRE)のジャパン特別レポート「物流施設利用に関するテナント調査 2022」より一部抜粋・再編集したものです。
※本文書は貴社の責任と判断で利用いただくものであり、弊社は、貴社又は第三者が本文書に基づいて行われた検討、判断、意思決定及びその結果について法律構成・請求原因の如何を問わず一切の責任を負わないものとします。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録
会員向けセミナーの一覧