物流拠点戦略「立地」
■物流集積地・大都市圏が引き続き人気
今後の物流拠点の拡張について、どのような立地・エリアを検討しているのかを聞いたところ(図表7)、もっとも多かった回答が「物流集積地」(62%)と「都市圏内の郊外」(49%)だった。物流集積地や都市圏郊外は新規の供給が多いうえに賃料がリーズナブルであることから、テナント企業がこのような立地で拡張を検討するのは当然ともいえる。
■地方都市・中継地点も注目
また、「地方都市、中継地点」を検討する企業が全体の26%と、比較的多かったことが注目される。後述する「2024年問題」への対応も含めて、中継地点となり得る大都市圏以外の立地においても物流施設の需要が高まっていることが示唆される。
一方で、「都心部」や「住宅地至近」での拡大を検討している企業の割合は、昨年の調査結果と比べて減少した(昨年調査ではそれぞれ「都心型物流センター」「市内配送ステーション(ラストマイル)」の項目で調査)。川下での物流拠点を拡張する企業の数は昨年と比べると落ち着いたようにも見受けられるが、今年竣工予定の大型都心物件は順調に消化されており、需要は依然として堅調だと認識される。
さらに、都道府県別での立地希望を聞いたところ(図表8)、首都圏、近畿圏、および中部圏に集中していることが改めて確認された。ただし、物流業者が主に首都圏と近畿圏での拡張に意欲的であるのに対して、荷主企業は近畿圏と中部圏に相対的に強い関心があるようだ。製造業などの企業が事務所や工場に近い倉庫を必要としている一方、川下を担う物流企業は人口の多い都市部全体での拡張を検討していることが読み取れる。
物流拠点戦略「建物の設備」
キーワードは引き続き「快適性」「BCP」「ESG」
倉庫の仕様に関する今後の要件について聞いたところ(図表9)、「今後大きくなる、増える」との回答の割合がもっとも高かったトップ3は「空調付き施設の需要」(69%)、「非常用電源」(63%)、そして「環境性能・グリーンエネルギー」(62%)で、昨年の調査結果と変わらなかった。つまり、先進的物流施設の仕様におけるキーワードが「快適性」「BCP」そして「ESG」であることに変わりはない。
従業員がより働きやすい環境を整えようとする動きは、「感染症対策」や「福利厚生施設」の要件が大きくなると回答した企業の割合が高かった(それぞれ50%と41%)ことからも認識される。
■BCP
BCPに関して、「免震構造」ならびに「非常用電源」についてニーズが「大きくなる」とした回答者の割合はそれぞれ54%、63%となった。実際、災害対策を背景とした移転ニーズは東日本大震災以降に顕在化している。ここ最近も比較的大きな地震や台風による水害が起きており、BCPに関する企業の意識は再び高まっているとみられる。電力会社は需給がひっ迫した際、あるいは震災などに際して安全を確保するために計画停電を実施していることからも、自然災害の多い日本における非常用電源と免震構造を求める傾向は今後も変わらないだろう。
■ESG
ESGについては、「環境性能・グリーンエネルギー」の要件が「大きくなる」と回答した企業の割合が62%と、昨年比で大きく上昇した(図表10)。
また、「小さくなる」と答えた企業は2年連続でゼロだった。ESG施策の優先度は依然として高くはないが(図表11)、今後は高まると考える企業が大半であることが明らかとなった。
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