世界的に経済不安が広がった2022年上期、日本不動産市場で「融資条件」が緩和した理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

戦争や金利上昇により、世界的な経済不安が広がった2022年上期、日本不動産市場で「融資条件」が緩和しました。なぜなのでしょうか? ダラスを本拠とする世界最大の事業用不動産サービス会社、シービーアールイー株式会社(CBRE)、リサーチ部門ディレクター本田あす香氏が同社レポート「レンダーサーベイ 2022」(2022年6月)の調査結果を紐解いていきます。

2022年のレンダーによる融資姿勢

懸念は「コロナ禍」から「金利上昇」へ推移

デットマーケットにおける今後1年間の最大の障壁について、回答率がもっとも高かったのは「国内外の経済ショック」(38%)で、調査開始以来5年連続でトップとなった。また、2番目に高かった「金利上昇」の回答率は33%で、対前年比29%ポイントと大幅に増加。次いで、「世界的な政情不安」が17%で同13%ポイント増加した。

 

レンダーの懸念は、「コロナ禍」から「金利上昇」ならびに「世界的な政情不安」にシフトした。現在、日銀は金融緩和政策を維持、長期金利の上限を0.25%に抑え込む姿勢を明確にしている。ただし、世界的な金融引き締めの動きが日本の不動産投資市場にも影響することをレンダーは懸念しているようだ。

 

[図表1]デットマーケットにおける最大の障壁(単一回答)

 

デットマーケットは引き続き改善

デットマーケットは、コロナ禍から脱しつつあるようだ。レンダーが回答した今後1年間の見通しに基づく指数(DiffusioIndex、以下「DI」)は全項目で改善。特に、「不動産価格」、「LTV」、「REIT向け融資」のDIは大きく改善した。投資市場ではエクイティ投資家の投資意欲が高く、J-REITの株価もコロナ禍以前の水準に回復しつつある。不動産投資の資金需要が堅調なことが背景にあると考えられる。

 

一方で、「融資期間」や「スプレッド」のDIは改善したものの、DIの水準は依然としてマイナス圏にある。国内外の景気悪化に対する懸念のほか、低金利政策によって圧迫されている収益を改善させるため、高めのスプレッドを維持しようとする姿勢も背景にありそうだ。

 

[図表2]今後1年間のデットマーケットの見通し

 

新規融資額は増加傾向が続く

融資戦略について、シニアローン(以下、シニア)とメザニンローン(以下、メザニン)にわけて質問した。2021年度は、メザニンの新規融資額が増加したとみられる(図表3)。昨年度の新規融資の割合は0%だったと回答したメザニンレンダーの割合は20%と、2020年度(47%)より27%ポイント減少した。背景には不動産価格の上昇でメザニンローンに対するニーズが増加していることが考えられる。

 

[図表3]融資額(実績)に占める新規融資の割合(単一回答)

 

2022年度の新規融資額も引き続き増加するとみられる。「新規融資額が前年度より増加する」と回答したレンダーはシニアで39%、メザニンで54% (図表4) 。前年調査からそれぞれ3%ポイント、38%ポイント減少したものの、どちらも「新規融資額は減少する」の回答率を大きく上回った。また、レンダーのコメントには、「融資案件が増加」、「目標達成の目途が立っている」といった内容が複数みられた。

 

[図表4]新規融資額の見込み(単一回答)

 

魅力的なアセットタイプは3年連続「物流施設」

シニアレンダーが選んだもっとも魅力的なアセットタイプは、「物流施設」が36%、「オフィス」が29%となった。メザニンレンダーにおいても「物流施設」は64%と、前年調査から20%ポイント増加した。収益が安定し、賃貸需要も堅調な「物流施設」に対する評価はエクイティ投資家だけでなく、レンダーからも高い。同様に、「賃貸マンション」も人気だ。両アセットタイプに対する投資の拡大は今後も続くだろう。

 

また、「オフィス」については、シニアの回答率が前年の7%から22%ポイントも増加。オフィス賃貸市場が前年に想定したほど悪化していないことが影響したと考えられる。なお、2021年の日本のオフィス投資額は対前年比13%増加し、アセットタイプ別投資額としてはもっとも大きかった。投資市場でのエクイティ投資家の旺盛な投資意欲も、レンダーのオフィスに対する見方に影響したようだ。

 

[図表5]もっとも魅力的なアセットタイプ(単一回答)

 

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    シービーアールイー株式会社(CBRE)
    リサーチ部門

    2002年、生駒データサービスシステム(現シービーアールイー)に入社。オフィスを中心とした事業用不動産に関するコンサルティング業務に従事。2012 年からリサーチ部門にて投資市場のレポート執筆、分析業務を担当。

    著者紹介

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    ※本記事はシービーアールイー株式会社(CBRE)のジャパン特別レポート「レンダーサーベイ 2022」より一部抜粋・再編集したものです。
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