(※写真はイメージです/PIXTA)

歩けないより歩けるほうがいい。リハビリが大事であると精神科医の和田秀樹氏は考えていました。そんな和田氏のお母さんが骨折で入院。リハビリで歩けるようになりましたが再び骨折で入院。そんなお母さんはいつも前向きです。老人医療に詳しい精神科医の和田秀樹氏が著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)で解説します。

ラクして笑っていられるほうがいい

実は私もそう考えていました。歩けないより歩けるほうがいい。リハビリが大事であると。そんな私の母が油断して骨折してしまいました。リハビリで無事に歩けるようになってほっとしていたら、その後だんだん歩けなくなって、手押し車を使って外に出ていました。

 

便利なものを利用して外に出るというのは大事です。仕方ないかと思っていたら、その後、母はまた骨折して入院しました。いまは車いすも利用しています。

 

「なんだか車いすは楽でいいのよ」

 

と、笑っている母を見たら、もうリハビリしろとは言えなくなりました。ラクでいいじゃないか。ラクで万歳。つらいリハビリをするより、もう何年あるかわからない人生です。ラクして笑っていられるほうがいいと開き直りました。

 

車いすの生活になるということは、人の世話になる量が増えるということです。介護度が上がり、サービスを増やさないといけません。でも、だんだんとみんなが子ども返りして、自分の世話を人にゆだねていくことを受け入れていく、本人だけではなく家族もその気持ちが必要だなと思いました。

 

子ども返りは、ケアの問題だけではなく、心の解放にもつながります。

 

少しずつ大人の責務から降りていくことです。見栄やプライドを捨てて世の中を眺めてみると、高齢者の目には新しい世界が広がることもあるようです。俳句や川柳の世界では高齢者が面白いものをつくります。忙しかったときは空や花をじっくり見る暇もなかったでしょう。

 

高齢者となって、美しいものは美しいと世界を新鮮に見直してみる。これは子どもに返った精神だからできることです。

 

いつまでも凝り固まった大人の目しか持てないと、認知症も楽しめなくなります。

 

先に紹介した映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』の続編も上映されているようです。お父さんは98歳になり、お母さんは脳梗塞で入院したそうです。まだ観ていませんが、このおふたりが最後の日々をどう閉じていくか見てみたい気がします。

 

和田 秀樹
和田秀樹こころと体のクリニック 院長

 

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本連載は和田秀樹氏の著書『80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい』(廣済堂出版)より一部を抜粋し、再編集したものです。

80歳の超え方 老いは怖くないが、面倒くさい

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和田 秀樹

廣済堂出版

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