米中対立は先鋭化しているようにみえます。世界の普遍的価値である「人権」をウイグルで、それからその前には香港で、中国はやりたい放題です。それでも結局、先進諸国は中国に対して、大した制裁はやっていない、できないといいます。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

「中国は為替操作国とは認定せず」の意味

■中国を軽視できないアメリカ――トランプ時代

 

トランプは大統領就任の前から「中国は為替操作国だ。だから制裁する」と言っていて、実際、貿易面で中国製品に高い関税をかけるという強硬路線を展開しました。

 

しかし為替操作国認定は結局、棚上げしました。議会もずっとそれで納得してきて、バイデン政権になったらどうなるかなと思っていましたが、やはり為替操作国認定をしませんでした。先日、イエレン財務長官が「中国は為替操作国とは認定しません」と発言したと、『ブルームバーグニュース』が報じていました。

 

これが意味しているのは何でしょうか。

 

先にブッシュ(子)政権時のオニール財務長官が江沢民政権要人と合意したことに触れましたが、このときに米中が恐れた、変動相場制にすると中国経済は非常に不安定で崩壊する可能性すらあるという事実、これはいまだに変わっていないのです。アメリカも中国経済を崩壊させるまでは考えていないという意味です。

 

逆にいうと中国経済が崩壊したら、アメリカもその損害は途轍もないことになる。為替操作で制裁するぞという伝家の宝刀をちらつかせて、中国市場を開放させるほうが実利的という判断なのでしょう。

 

それだけ中国の経済は巨大であったし、ますます巨大になっています。その巨大さが周囲への軍事的脅威を生む源泉になっているのは厳然とした事実ですが、トランプ政権もバイデン政権も「中国経済を滅ぼさねばならない」とは全然考えていません。それをやってしまったら、自分たちはおろか全世界が奈落の底に落ちるということになる。

 

世界の普遍的価値である「人権」をウイグルで、それからその前には香港で、中国はやりたい放題に蹂躙しています。それでも結局、先進諸国は大した制裁はやっていない、できないのです。

 

田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

 

 

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本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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