中国・習金平政権の「香港錬金術」の息の根を止める唯一の方法

中国の弱点は通貨制度が事実上のドル本位制であることです。もし香港ドルとアメリカドルの交換を禁止する段階にアメリカが踏み出せば、もう中国は震え上がってしまいます。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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中国経済の最大の弱点があった

■中国経済の息の根の止め方

 

香港がイギリスから中国に返還されることが決定した際、即ち1984年12月、北京で「香港問題に関する中華人民共和国政府およびグレートブリテンおよび北アイルランド連合王国政府の共同声明」(「中英共同声明」)が締結されました。これにより1997年7月1日に香港は中国に返還されることとなりました。

 

「中英共同声明」では返還後の香港に中国の法律や制度はそのまま適用されず、特別行政区となり「一国二制度」の政策を50年間維持すると約束されています。つまり香港は中国本土とは切り離され、独自の行政・立法・司法権を有し、通貨や金融システムを維持できるということです。

 

この制度が維持されることを条件に、アメリカ議会は1992年「米国―香港政策法」を通過させ、1997年に発効させています。この法律は香港の取り扱いを規定しており、香港に対して関税を低くし、ビザ発給や税関手続きの簡略化、銀行業や法執行をヨーロッパと同等にするなど、中国とは異なる特権を香港に与えました。

 

とくに「香港ドルとアメリカドルの自由な交換を認める」措置は、香港をアジアの金融センターに押し上げたわけです。

 

しかしながらいまや中国は、こうして定められた香港の高度な自治を、ことごとく奪おうとしています。2019年には民主化要求をことごとく弾圧して、習近平は大変な強硬策に転じてしまいました。

 

それに対してトランプ政権というよりも、アメリカの議会が超党派で動いて「香港人権・民主主義法」を制定しました(同年11月成立)。それに関連づけた「米国― 香港政策法」の修正条項によって、アメリカ政府は香港の自治、人権・民主主義の状況によっては「通貨交換を含むアメリカと香港間の公的取り決め」を見直し対象にできるようにしました。要するに、交換を禁じることができるんだぞという意味です。

 

アメリカは政府も議会も、中国経済の息の根の止め方を恐らく理解しています。

 

香港の発券銀行には中国銀行、イギリス系のHSBC(香港上海銀行)、それからスタンダードチャータード銀行の三つがあります。ここが香港ドルを発行します。この香港ドルはアメリカドルとのペッグ制ですから、アメリカドルが入ってきて、それを買い上げて、それを担保にして刷られています。だから、香港ドルの裏付けになっているのはアメリカドルということになります。

 

例えばアメリカドルが「2」くらい入ってきたら「1」だけ香港ドルを発行する。だから香港ドルの信用度は、アメリカドル以上にあるという皮肉な結果になっているのですが、とにかく香港ドルとアメリカドルは自由に交換できるのです。

 

香港には中国が人民元をほぼ自由に持ち込めます。中国共産党のメリットは、アメリカドルが必要なときに人民元をボンと香港に持っていけば、香港の金融機関と金融当局が香港ドル経由でほぼ自由に交換できることです。いくらでもアメリカドルを手に入れられるわけです。そういう政治的な仕掛けがあるのです。

 

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    産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

    1946年高知県生まれ。70年早稲田大学政治経済学部経済学科卒後、日本経済新聞入社。ワシントン特派員、経済部次長・編集委員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級フェロー、香港支局長、東京本社編集委員、日本経済研究センター欧米研究会座長(兼任)を経て、2006年に産経新聞社に移籍、現在に至る。主な著書に『日経新聞の真実』(光文社新書)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『経済で読む「日・米・中」関係』(扶桑社新書)、『検証 米中貿易戦争』(マガジンランド)、『日本再興』(ワニブックス)がある。近著に『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)がある。

    著者紹介

    連載日本人の給料が25年間上がらない残念な理由

    本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

    「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

    「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

    田村 秀男

    ワニブックスPLUS新書

    給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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