(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の防衛費はかつての三木内閣が、国民総生産(GNP)比で1%以内にすると閣議決定しました。なぜGDP1%枠なのか、真剣に議論されことがありません。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

米国「年次改革要望書」に応えてきた

■日本と弱肉強食のアメリカの価値観は違いすぎる

 

小泉改革のなかで、商法改正の一環として新会社法を施行して、「会社は株主のものだ」というふうに定義を変えていきました。そのため、すべての経営者は株主のために尽くさなければいけないということになってしまいました。ブッシュ(子)と小泉時代の「年次改革要望書」に応えたものです

 

まずアメリカから求められたのは、アメリカ型の資本主義への移行です。それは企業そのものが商品という考えです。労働者も商品、すべてが商品です。会社を株式市場、あるいは金融市場で取引される対象としていきますから、売ったり買ったり、M&A(合併・買収)すれば金融資本が大いに儲かるわけです。

 

大きい企業の場合は会社を分割するなど、ありとあらゆることをやります。それで個人投資家や、あるいは年金基金のような巨大な機関投資家がその株主になっていきます。

 

最高経営責任者(CEO)は株主のために貢献しなければいけません。そのため、きちんと利益を出して、大きな配当を出す経営ができれば、法外なボーナスがもらえる。それがアメリカ型の資本主義です。

 

アメリカという国は、イギリス国王のものだった新大陸東部13州の土地を、独立派が奪ったのが「建国」です。ヨーロッパ大陸で食いっぱぐれてやって来た人々が、先住民のインディアンから土地を奪い、狭い居留地に押し込めるか、反抗すれば殺戮し、どんどん西進して太平洋にたどり着いた歴史がベースです。

 

そもそもアメリカは略奪者の文化と言えるでしょう。ただし、ルールをきちんとつくってやってきたし、開放的で、来る者は拒まず、新参者を受け入れるというのがアメリカでもあります。

 

対して日本は、まったくそういった側面がなく、皆仲よくやりましょうと国をつくってきました。徳川一強に見える幕藩体制にしても、各藩はそれぞれ高度な自治を行っていて、ひとつの国を成していたわけです。それで皆が努力をして、ある意味で助け合いながらやってきたというのが、日本の封建時代の実情です。だから西洋でいうような封建主義とは全然質が違うものなのです。

 

日本はそういう基礎のもとに商業も教育も発達して、都市は非常にきれいなものでした。

 

初代アメリカ総領事タウンゼント・ハリスの秘書兼通訳を務めたオランダ人のヘンリー・ヒュースケンの『ヒュースケン日本日記』(青木枝朗訳 岩波文庫)などを読むと、日本の風景にはもちろん、みんなが幸せそうで、身ぎれいな格好をして、女性たちも子供たちもイキイキしている姿にも感動しています。

 

とにかく江戸の都市としての機能の充実ぶりは、当時では世界に類例がありません。上下水道の衛生環境も含めて、当時のパリなど比較にならないくらい進んでいたのです。生活物資やエネルギーも持続可能な循環型社会を実現していました。

 

日本の場合、この列島のなかで基本的に人が移動しない農耕民族としての文化をつくってきました。一方、ヨーロッパ人が植民して以後のアメリカは、とにかく力の強い者がその能力に応じて、豊かさを手に入れてきたわけです。

 

強い者がより豊かな金品を得ていくことがまったく罪悪視されないなかで生きてきた人たちと、狭い列島のなかでともに何かを育んで、それを皆で分け合うように生きてきた私たちでは、根本的に価値観が違うと思います。

 


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本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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