(写真はイメージです/PIXTA)

不動産取引をオンライン上で行う「ネット不動産」が解禁されました。これにより、内見のために移動する時間やコストが削減できるなどの面で一般消費者の利便性が向上する一方で、なりすましなどのリスクも新たに発生しています。ネット不動産の普及は私たちの生活にどのような影響をあたえるのか、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が詳しく解説します。

ネット不動産の法的リスク、課題はある?

不動産仲介業者がネット不動産を導入するにあたっては、課題も少なくありません。

 

まず、最大の課題は、相手のなりすましを防ぐ手段の確保です。オンラインの場合、たとえば別人になりすまして不動産を賃借することなどが、対面よりも容易となってしまう可能性があるでしょう。そのため、これまでよりも、本人確認により注意する必要があるといえます。

 

また、売買においては不動産の名義変更手続きを行う司法書士が介在することが多く、この場合には完全にオンラインで完結させることは困難です。売買において万が一なりすましがあれば非常に大きな問題となるため、この点においては対面が安心であるといえる一方で、やはり利便性の面からいえば多少劣ってしまうことは否めません。

 

そして、売主が宅建業者である場合で、かつ宅建業者の事務所等以外で不動産の売買契約を締結した場合には、クーリング・オフの対象となります。※7

 

※7.国土交通省:宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方

 

オンラインで契約を締結した場合には「宅建業者の事務所等」以外の契約であると判断される可能性があり、クーリング・オフ期間内はクーリング・オフの可能性を踏まえておく必要性が生じる可能性があるでしょう。

 

さらに、クーリング・オフができる期間は、クーリング・オフについて記された書面の交付から8日間です。 オンラインで契約を締結した場合、この8日の起算日がいつになるのかという点が問題となる可能性も考えられます。

その他不動産テック系サービス紹介

不動産業界においても、テック系のサービスの波が押し寄せています。たとえば、次のようなサービスがすでに誕生しています。

 

住宅ローンテックのiYell

従来、住宅ローンはユーザーが金融機関の融資条件を1件1件見比べて、検討することが一般的でした。そこで、iYell株式会社は、エンドユーザーに最適な住宅ローンを提供する住宅ローンプラットフォームの運営を開始しました。

 

金融機関にとっては住宅ローン業務の効率化となり、エンドユーザーにとっては全国の金融機関から最適な住宅ローンを見つけやすくなるなど、テクノロジーを使って住宅ローンのさまざまな課題を解決するサービスを展開しています。

 

収益不動産管理のWealthPark

WealthPark株式会社は、不動産オーナーと管理会社をアプリでつなぐ業務支援システムである「WealthParkビジネス」を展開しています。

 

不動産管理会社にはクラウド型システムを、オーナーにはオーナーアプリを提供することで、収支報告や売買提案などの日々のやり取りを、簡単かつスピーディに行うことが可能となります。

 

AI査定によるマンション売却のすむたす

株式会社すむたすでは、AI査定を活用したマンション売却サービスを展開しています。

 

個人情報の提供をしなくても、実際の買取価格が最短1時間でわかり、売却を希望する場合にも仲介手数料はかかりません。

 

まとめ

不動産業界にも、テック化の波が押し寄せています。2022年5月にネット不動産が全面解禁されたことで、今後もこの流れが顕著となっていくことでしょう。

 

 

西尾 公伸

Authense法律事務所

弁護士

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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