(※写真はイメージです/PIXTA)

従業員に残業をさせたら、雇用主である企業は残業代を支払わなければなりません。もし残業代を適切に支払っていない場合、後々訴訟などのトラブルに発展する可能性があります。では、残業代や残業代計算のもととなる基礎賃金は、どのように計算すればよいのでしょうか? Authense法律事務所の西尾公伸弁護士が詳しく解説します。

「残業」には2種類ある

残業代を正しく算定するためには、まず「残業」について正しく理解しておくことが必要です。残業代計算において、残業はまず「法内残業」と「法定時間外労働」とに区分されます。

 

それぞれが指す「残業」は、次のとおりです。

 

1.法内残業

法内残業(法定内残業)とは、就業規則などで会社が定めた所定労働時間は超えているものの、労働基準法で規定された上限は超えていない範囲の残業のことです。

 

労働基準法では、使用者(会社)は労働者(従業員)に、休憩時間を除いて1日8時間、1週間40時間を超えて労働させてはならないとしています(労働基準法32条)。この、「1日8時間、1週間40時間」のことを、「法定労働時間」といいます。

 

もちろん、会社が法定労働時間未満の労働時間を、就業規則や労働契約で独自に定めることは問題ありません。この場合には、所定労働時間外であるものの、「1日8時間」は超えていない残業が発生する可能性があります。

 

たとえば、会社の所定労働時間1日6時間である場合において従業員が7時間働いた場合、所定労働時間を超えた1時間が法内残業となります。

 

2.法定時間外労働

法定時間外労働とは、先ほど解説した「休憩時間を除いて1日8時間、1週間40時間」の基準を超えて行った労働を指します。

 

たとえば、会社の所定労働時間が1日6時間である場合において、従業員が9時間働いた場合、このうち2時間は法内残業である一方で、8時間を超えた分の1時間は、法定時間外労働に該当するということです。

 

なお、法定労働時間を超えて従業員を残業させるためには、いわゆる「三六協定(さぶろくきょうてい)」の締結が必要となります。三六協定とは、法定労働時間の延長や休日労働をすることについて、労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者と締結する、書面による協定です(労働基準法36条)。

 

三六協定を締結しないまま法定労働時間を超えて残業をさせることは違法であり、使用者が6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります(労働基準法119条1項)。

 

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※本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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