(写真はイメージです/PIXTA)

利用規約違反をしたユーザーに対し、企業側は制裁をすることができますが、そのためには規約の内容を作り込でおくことが重要であると、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士はいいます。本記事では、違反行為から、ユーザーと訴訟にまで進展した事例をもとに詳しく解説します。

利用規約の有効性

利用規約とは、一般的に、サービスの利用者がそのサービスを利用する際のルールを、サービスを提供する事業者が定めたものです。

 

利用者からのサービス利用申込に際して、適切な表示などをすることにより、利用規約はサービス提供者である事業者と利用者との契約の内容となります。

 

この利用規約が、改正民法で新設された「定型約款」に該当すれば、利用規約を契約内容とすることの合意の推定や、利用規約の変更についての合意の推定などの効果を受けることができます。

 

利用規約が定型約款と認められるための条件は、次のとおりです。

 

・ その取引が定型的な取引であること

・サービス提供者が、その利用規約を契約の内容とする旨をあらかじめ相手方に表示していたこと、または定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたこと

 

たとえば、ウェブ上で提供するサービスである場合には、次のような形をとることで、事業者側が用意した利用規約への同意を取ることが多いでしょう。

 

・ ユーザーがサービスの利用を申し込もうとする際に、利用規約を表示する

・ユーザーが利用規約を確認し、かつ利用規約に同意する旨のチェックボックスにチェックを入れないと申し込み画面に進めないように設計する

 

このような手順を取ることにより、原則として利用規約はサービス提供者である事業者とユーザーとの間の有効な契約内容となります。

利用規約違反者に制裁ができる条件

サービス利用者が不適切な行為をした際に、サービス提供者である事業者はそのユーザーに制裁を課すことはできるのでしょうか? 実は、どのようなときであっても制裁が可能となるわけではありません。

 

事業者がユーザーに制裁をするための主な条件は、次のとおりです。

 

法律または利用規約に根拠があること

1つ目の条件は、そのユーザーの不適切な行為について、法律または利用規約に規定があることです。

 

たとえば、利用規約のなかにユーザーの禁止行為として「他のユーザーへの誹謗中傷」と記載があるのであれば、実際に他のユーザーを誹謗中傷する書き込みをしたユーザーに制裁措置を取ることができる可能性があるでしょう。

 

法律または利用規約に沿った対応をすること

2つ目の条件は、法律や利用規約に、制裁内容についての規定があることです。たとえば、利用規約に、規約違反の行為をしたユーザーはアカウント停止と退会措置を取る旨が定められていれば、原則としてそれに沿った対応が可能となります。

 

規約違反が不当条項ではないこと

たとえ利用規約に定めていたとしても、規約が不当条項であり無効とされた場合には、制裁措置を取ることが困難となります。

 

たとえば、「本規約に違反をしたユーザーは、当社に対して罰金100万円を支払う」など定めていたとしても、違反の態様や、違反の程度が軽微である場合などには、不当条項として規約どおりの制裁が認められない可能性が高いでしょう。

 

どの程度の条項であれば不当条項となり得るかは、提供しているサービスの内容や違反の程度などによって個別的に判断され、一律の線引きは困難です。そのため、利用規約を策定したり修正したりする際には、弁護士へ相談することをおすすめします。

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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