(写真はイメージです/PIXTA)

不動産取引をオンライン上で行う「ネット不動産」が解禁されました。これにより、内見のために移動する時間やコストが削減できるなどの面で一般消費者の利便性が向上する一方で、なりすましなどのリスクも新たに発生しています。ネット不動産の普及は私たちの生活にどのような影響をあたえるのか、企業法務に詳しいAuthense法律事務所の西尾公伸弁護士が詳しく解説します。

ネット不動産解禁までの時系列

ネット不動産企業が台頭している背景には、法改正が色濃く影響しています。特に、2022年5月18日のネット不動産全面解禁は、今後もさまざまなサービスが生まれる契機となることでしょう。ここでは、ネット不動産全面解禁までの経緯を詳しく解説します。

 

IT重説(賃貸)の本格運用開始

2017年(平成29年)10月1日、賃貸借契約の「IT重説」が解禁されました。※2

※2.国土交通省:賃貸取引に係るIT重説の本格運用の開始について

 

「重説」とは重要事項説明の略で、契約締結前に宅地建物取引士が行うべきとされている賃貸借や売買対象となる不動産についての説明のことです。重要事項説明は、説明すべき内容や説明の方法が宅地建物取引業法(宅建業法)で規定されており、従来は対面での説明に限定されていました。

 

このうち、賃貸借契約についての重要事項説明に限定し、テレビ会議システムやスカイプなどのテレビ電話で行うことが認められたのが2017年10月1日のことです。

 

ただし、事前に宅地建物取引士が記名・押印した重要事項説明書などを入居予定者に送付しておかなければならず、重説および賃貸借契約書は紙媒体で締結する必要があるなど、部分的な解禁にとどまっていました。

 

IT重説(売買)の本格運用開始

また、2017年にIT重説が解禁されたのは、賃貸借契約についてのみでした。その後2021年(令和3年)3月30日に、不動産の売買契約についてもIT重説が解禁されています。※3

※3.国土交通省:不動産の売買取引に係る「オンラインによる重要事項説明」(IT重説) の本格運用について~令和3年3月30日より開始します~

 

これにより、重要事項説明については、賃貸借と売買いずれにおいても、オンラインで行うことが可能となりました。

 

宅地建物取引業法の改正

2021年(令和3年)5月、宅建業法を含むデジタル改革関連法案が成立しました。これは、日本におけるデジタル化を加速させるための柱となる大改正であり、この一環で「デジタル社会形成基本法」や「デジタル庁設置法」が新設されました。これに伴い、宅建業法など、押印や書面交付などを求める手続きを定める48法律が改正されています。※4

※4.厚生労働省:デジタル改革関連法の全体像

 

デジタル改革関連法一部施行

2021年9月1日、先ほど解説したデジタル改革関連法の一部が施行されました。※5

※5.デジタル庁:デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律の概要

 

これにより、さまざまな行政手続きにおける押印が廃止されています。ただし、宅建業法など施行までに一定の準備期間が必要なものについては、この段階ではまだ施行されていません。

 

ネット不動産全面解禁

2022年5月18日が、ネット不動産の全面解禁日であるといわれています。これは、この日をもって不動産取引にあたって宅建業者が交付すべき書類についての押印が不要となり、また、紙ではなく電磁的方法による交付が可能となったためです。

 

これにより、原則として、不動産取引をすべてオンラインで完結できることとなりました。※6

※6.国土交通省:宅地建物取引業法 法令改正・解釈について

 

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本記事はAuthense企業法務のブログ・コラムを転載したものです。

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