(※写真はイメージです/PIXTA)

「認知症=怖い」はもう古い。医療・介護・福祉・高齢者問題をテーマに活躍、多数の著書を持つジャーナリストと、メディアや新聞各社でも多数活躍する司法書士との共著『認知症に備える』より、そもそも認知症とはなんなのか、認知症になったらどんなことに本人が困るのか、もしくは困らないのか、どのような制度が利用できるのか等、すぐ実生活に活かせるようなヒントを、以下抜粋して紹介する。

キッカケは「テレビの特集」だった

認知症になる前に金銭面で何らかの対策を打っておいた場合、逆に何も対策を打たないまま認知症になった場合、それぞれどんなことが起こるのか、例を挙げて説明しましょう。

 

光子さん(仮名・52歳)には、80歳の父と79歳の母がいます。両親は父親名義の家で2人暮らし。両親のもの忘れが最近気になっており、ゆくゆくは施設への入所を検討する必要性も感じています。

 

テレビで認知症の特集を見て、父親が認知症になったら実家を売却できなくなるかもしれないという話に不安を感じ、司法書士に相談しました。

 

そこで、家の管理を家族に任せる方法(いわゆる「家族信託」)を勧められ、両親と話し合い、検討した結果、父親と光子さんとの間で家族信託契約を結び、手続きを実行しました。

 

光子さんが行ったのは、具体的には次の2つの手続きです。

 

①父親名義の土地建物を、信託契約に基づいて光子さん名義に変更する手続き

 

② 父親専用の預金口座(「信託口口座」といいます)を開設し、光子さんが父親の預貯金を管理できるようにする手続き

 

これらの手続きを行ったうえで、実家の固定資産税や修理費などは、信託口口座で預かっていた父のお金を使い、光子さんが管理と支払いをしていきました。

 

しばらくしてから父親が認知症を発症し、契約ごとや銀行での手続きをひとりですることができなくなりました。そして、いよいよ両親2人の自宅での暮らしが厳しくなってきた段階で、実家を売却して、その資金で父母ともに施設に入所しました。

 

信託契約により、実家の名義が光子さんになっていたため、認知症になった父親が関与することなく、スムーズに売却の手続きをすることができたのです。

“対策なし”菊枝さんの場合──

いっぽう、光子さんと同じ家族構成の菊枝さん(仮名・52歳)は、何も対策をしていません。78歳の父親と77歳の母親は父親名義の家に2人暮らし。高齢者の2人暮らしはなんとなく不安でしたが、まだ2人とも元気だし、そもそも何をしておけばいいのかわかりませんでした。

 

そして、何の対策も手続きもしないままに年月が過ぎ、ついに父親に認知症の症状があらわれ、日常生活が困難な状態になってしまいました。父親の定期預金を解約して入所できる施設を探そうと思いましたが、銀行から「成年後見人をつけないと解約できません」と言われてしまい、ひとまず母親と菊枝さんの貯金を切り崩して施設の入居金を支払いました。

 

母親についても、自宅での暮らしが厳しい状態になったら実家を売却したいと考えていたので不動産業者に相談しましたが、不動産業者からも「お父様に成年後見人をつけないと売れません」と言われてしまいました。

 

そう、菊枝さんのご家庭の場合は、成年後見人を選任するしか選択肢がなくなっていたのです。

 

 

 

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認知症に備える

認知症に備える

村山 澄江,中澤 まゆみ

自由国民社

「認知症=怖い」はもう古い! そもそも認知症とはなんなのか、認知症になったらどんなことに本人が困るのか、もしくは困らないのか、生活はどのように変化するのか、どこに何を相談できるのか、法的な制度としては、認知症に…

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