物盗られ妄想、尿失禁、暴力・暴言…認知症の「行動・心理症状(BPSD)」は、本人のストレスの叫び (※写真はイメージです/PIXTA)

「認知症=怖い」はもう古い。医療・介護・福祉・高齢者問題をテーマに活躍、多数の著書を持つジャーナリストと、メディアや新聞各社でも多数活躍する司法書士との共著『認知症に備える』より、そもそも認知症とはなんなのか、認知症になったらどんなことに本人が困るのか、もしくは困らないのか、どのような制度が利用できるのか等、すぐ実生活に活かせるようなヒントを、以下抜粋して紹介する。

認知症の「中核症状」と「BPSD」

認知症には「中核症状」と「BPSD(認知症に伴う行動・心理症状)」の2つの症状があるといわれます。以前は「中核症状」「周辺症状」という分け方をされてきましたが、近年では「BPSD」という名称が一般的になっています。

 

中核症状というのは、認知症という状態を起こす脳の変化から起こる症状で、アルツハイマー型認知症では、判断力の低下、ものごとを記憶しにくくなる記憶障害、自分のいる場所や日時がわからなくなる見当識障害、状況が把握できず判断ができにくくなる実行機能障害、会話がうまくできなくなったり、空間認識ができなくなる高次脳機能障害などが起こるとされています。

 

しかし、こうした障害はすべての人に起こるわけではなく、認知症の原因になった病気に加え、人によってもあらわれ方は異なります。そして、年単位の時間をかけて少しずつ進行していきます。

 

いっぽうBPSDというのは、中核症状で起こる記憶障害や判断力の低下によって、周囲とのかかわりのなかで「不安や混乱」が起こり、日常生活にさまざまな支障が出てくる状態です。

 

財布などの置き場所がわからなくなった不安から、盗まれたと思い込む「物盗られ妄想」、トイレの場所がわからなくなった混乱から起こる「尿失禁」、手助けを攻撃と判断して起こす「暴力・暴言」、ここは自分の場所ではないという不安から、自分の場所を探して歩く「徘徊」……。

 

以前は「問題行動」と呼ばれていた行動ですが、本人にとってはそこに至った理由や要因がちゃんとあります。最大の要因はストレスです。

 

健康をそこねると身体の抵抗力がなくなるように、認知機能に障害が起こってくると、ストレスに耐えるチカラが低下します。たとえば、まぶしい照明や大きな音、スピードの速い会話や人ごみが苦手な認知症の人は少なくありません。

 

そうした物理的な環境に加え、栄養や水分の不足、便秘や下痢、視力や聴力の低下、薬の副作用といった身体にまつわる環境も、認知症の人に大きなストレスを与えます。不安、自信喪失、孤独感、絶望感のような心理的環境。さらに家族の無理解や周囲の偏見、居場所がない、自分の役割がない、味方がいないといった社会的な環境も。

 

そして、それが人によっては、「意欲がなくなる」「いらだつ」「怒りっぽくなる」「暴力的になる」「うつ状態になる」「大声を出す」「歩き回る」といった行動・心理症状(BPSD)につながってきます。

 

しかし、これらのBPSDは認知症の人すべてにあらわれるわけではありませんし、ずっと続くわけではありません。

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    ジャーナリスト、ノンフィクションライター

    1949年、長野県生まれ。雑誌編集者を経てライターに。人物インタビュー、ルポルタージュを書くかたわら、海外を取材し、『ユリ─日系二世ハーレムに生きる』(文芸春秋)などを出版。認知症になった友人の介護を契機に医療・介護・福祉・高齢者問題にテーマを移し執筆。全国で講演活動を続けるほか、東京都世田谷区でシンポジウムや講座を開催。住民を含めた多職種連携のケアコミュニティ「せたカフェ」主宰。世田谷区認知症施策検討委員。近著に『おひとりさまでも最期まで在宅』『人生100年時代の医療・介護サバイバル』(いずれも築地書館)、共著『認知症に備える』(自由国民社)など多数。

    著者紹介

    司法書士 村山澄江事務所 代表 

    介護や相続の『まさか』をなくすことがミッション。おばあちゃん子だったことがきっかけで、高齢者家族のサポートに注力。【略歴】1979年名古屋生まれ。2003年司法書士試験合格。2010年独立開業。2018年「AI相続®︎」 の立ち上げに参画。2020年株式会社エラン(東証プライム上場)「キクミミ」監修者に就任。認知症対策の相談数1300件以上。家族信託・成年後見の専門家として活動中。【メディア掲載等】日本経済新聞・日経ヴェリタス・読売新聞・朝日新聞。中央経済社「旬刊経理情報」。早稲田学報。週刊現代。週刊エコノミスト etc.【書籍】『今日から成年後見人になりました』(自由国民社)、『認知症に備える』(自由国民社)。【講演】各自治体、ハウスメーカー、生命保険会社、不動産会社、介護事業所、教会などで延べ3,000名以上へ講演。

    著者紹介

    連載「認知症=怖い」はもう古い!70代の足音が聞こえてくる前に、心と環境の準備のススメ

    認知症に備える

    認知症に備える

    村山 澄江,中澤 まゆみ

    自由国民社

    「認知症=怖い」はもう古い! そもそも認知症とはなんなのか、認知症になったらどんなことに本人が困るのか、もしくは困らないのか、生活はどのように変化するのか、どこに何を相談できるのか、法的な制度としては、認知症に…

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