(※写真はイメージです/PIXTA)

認知症の予備軍とされている「軽度認知障害(MCI)」は、放置すれば高確率で認知症に移行することが分かっています。しかし、早い段階で診断を受け、対策を講じれば認知症の発症を防いだり、進行を遅らせたりすることが可能です。MCIが疑われるサイン、認知症への移行を防ぐ研究について見ていきましょう。

“認知症前夜”といわれる「軽度認知障害(MCI)」とは

認知症とともに、軽度認知障害の認知度も上がりつつあります。軽度認知障害は英語で「Mild Cognitive Impairment」、略してMCIとも呼ばれています。

 

MCIとは、簡単に言えば「記憶障害はあっても、認知症とはいえない状態」であり、かつ、「数年後に認知症に移行する可能性がある」状態のことを指します。認知症ではなく、その一歩手前、認知症が疑われるけれどはっきりと分からない、健常者と認知症の中間にあたる状態といえます。

 

2013年に発表された厚生労働省の推計によると、65歳以上の高齢者3079万人のうち、認知症は462万人、MCIは400万人。つまり、65歳以上の4人に1人が認知症またはその予備軍ということになります。認知症とMCIの推計患者数の割合はほぼ半々ですので、MCIに注目が集まるのも当然といえるでしょう。

 

認知症の予備軍とされているMCIですが、早い段階で診断を受け、対策を講じれば認知症の発症を防いだり、遅らせたりすることが可能です。また、健常に戻る人も1割程度いるといわれています。一方で、MCIを放置しておくと、高い確率で認知症に移行することが分かっています。

 

国立長寿医療研究センターの研究班からは、MCIの高齢住民を4年間追跡調査したところ、14%が認知症に進んだ一方、46%は正常に戻ったとの結果報告があります。

 

研究は、認知症ではない65歳以上の愛知県大府市住民約4200人を2011年から4年間追跡したものであり、タブレット端末を用い、国際的なMCI判定基準をもとに約150項目に回答する形で認知機能を検査するというものです。当初時点で約740人(18%)がMCIと判定されましたが、4年後に同じ検査を行ったところ、MCIだった人の46%は正常範囲に戻っていたのです。

 

一方、4年の間に認知症と診断された人の割合は、正常だった人では5%だったのに対し、MCIだった人では14%であり、大幅に高かったことも分かりました。

次ページMCIが疑われる兆候/認知症への移行を防ぐには

※本連載は、旭俊臣氏の著書『増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

増補改訂版 早期発見+早期ケアで怖くない隠れ認知症

旭 俊臣

幻冬舎メディアコンサルティング

近年、日本では高齢化に伴って認知症患者が増えています。罹患を疑われる高齢者やその家族の間では進行防止や早期のケアに対する関心も高まっていますが、本人の自覚もなく、家族も気づいていない「隠れ認知症」についてはあま…

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