“認知症前夜”といわれる「軽度認知障害(MCI)」とは
認知症とともに、軽度認知障害の認知度も上がりつつあります。軽度認知障害は英語で「Mild Cognitive Impairment」、略してMCIとも呼ばれています。
MCIとは、簡単に言えば「記憶障害はあっても、認知症とはいえない状態」であり、かつ、「数年後に認知症に移行する可能性がある」状態のことを指します。認知症ではなく、その一歩手前、認知症が疑われるけれどはっきりと分からない、健常者と認知症の中間にあたる状態といえます。
2013年に発表された厚生労働省の推計によると、65歳以上の高齢者3079万人のうち、認知症は462万人、MCIは400万人。つまり、65歳以上の4人に1人が認知症またはその予備軍ということになります。認知症とMCIの推計患者数の割合はほぼ半々ですので、MCIに注目が集まるのも当然といえるでしょう。
認知症の予備軍とされているMCIですが、早い段階で診断を受け、対策を講じれば認知症の発症を防いだり、遅らせたりすることが可能です。また、健常に戻る人も1割程度いるといわれています。一方で、MCIを放置しておくと、高い確率で認知症に移行することが分かっています。
国立長寿医療研究センターの研究班からは、MCIの高齢住民を4年間追跡調査したところ、14%が認知症に進んだ一方、46%は正常に戻ったとの結果報告があります。
研究は、認知症ではない65歳以上の愛知県大府市住民約4200人を2011年から4年間追跡したものであり、タブレット端末を用い、国際的なMCI判定基準をもとに約150項目に回答する形で認知機能を検査するというものです。当初時点で約740人(18%)がMCIと判定されましたが、4年後に同じ検査を行ったところ、MCIだった人の46%は正常範囲に戻っていたのです。
一方、4年の間に認知症と診断された人の割合は、正常だった人では5%だったのに対し、MCIだった人では14%であり、大幅に高かったことも分かりました。