認知症は「病名」ではなく「状態」です
年を取れば誰でも、もの覚えが悪くなりますし、人の名前が思い出せなくなることも多くなります。
こうした「もの忘れ」は脳の老化ですが、認知症のもの忘れは単なる老化によるものだけではなく、脳の記憶にかかわる機能が何らかの原因で少しずつ低下し、日々の暮らしがだんだんうまく送れなくなっていく状態です。
引き金になるのはさまざまな病気ですが、認知症自体は「病名」ではなく、日常生活や社会生活を送るうえで支障が出てくる、「暮らしの障害」の総称です。
年を取れば誰でも認知症になる可能性があります。認知症の症状は人によって異なりますが、老化によるもの忘れと認知症のちがいと考えられるものをいくつか挙げてみましょう。老化では記憶していることの一部を忘れることはありますが、ヒントがあれば思い出すことができます。ところが認知症では、ヒントがあっても思い出せないことが少なくありません。
年を取ると判断力もだんだん衰えていきますが、認知症ではその低下がはた目にも目立つことが少なくありません。そして、老化によるもの忘れや判断力の低下は急激には進みませんが、認知症では人によっては早く進行し、生活に支障をきたすこともあります。
ただし、すべての症状がいきなり現れるわけではなく、年単位の長い時間をかけ、少しずつ症状が現われ、徐々に進行していきます。認知症の進行には、さまざまな環境が関係すると考えられています。
認知症の「症状」の引き金となる病気は70種類以上あるといわれ、原因になる病気によって症状のあらわれ方、経過や進行には大きなちがいがあります。
三大認知症と呼ばれているのが、「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」で、認知症全体の6割以上はアルツハイマー型認知症が占めているといわれます(下の図参照)。しかし、レビー小体型認知症は示されている数値より、実際にはもっと多いのではないか、という意見もあります。
認知症の原因にはいくつもの病気が組み合わさっていることがあるため、アルツハイマー型だと診断され治療を受けていた人が、実はレビー小体型だとわかったことで適切な治療につながり、状態が改善したということがよくあります。そういう意味でも、検査と診断は信頼できる医療機関で受けることが大切です。