(※写真はイメージです/PIXTA)

気候変動、貧困、飢餓、さらに戦争など地球規模の深刻な問題があふれています。日本人は時に、自分の利益を我慢してでも、他人を思いやることができる素晴らしい特長があります。唯一の被爆国であり、平和主義を掲げる日本人は、地球市民にふさわしい資質を持っています。ジャーナリストの岡田豊氏が著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)で解説します。

東京五輪の秀逸だったテレビ実況と解説

■日本人はなぜ日本選手を応援するのか。地球市民という概念

 

2021年夏、コロナ禍で迎えた東京オリンピック・パラリンピック。みなさんはどんな思いで向き合ったのでしょうか。ここから、ちょっと、禅問答のような話にお付き合いください。

 

「日本人は、どうして他国の選手よりも日本選手を応援するのか」

 

オリ・パラの季節になると私は自分にこう問いかけます。おかしな自問自答です。

 

「日本人なんだから日本選手を応援して当たり前だろう」

 

こう言われて当然です。

 

初めてそんな自問自答をしたのは、共同通信の記者時代です。共同通信は、オリ・パラのニュースを世界に配信します。「記者が日本人を応援していては、世界の人々に対して公平な報道ができなくなるかもしれない」と本気で考えたのです。

 

そこから派生し、「日本人は、どうして、他国の選手よりも日本選手を応援するのか」と思いめぐらすのですが、すっと腑に落ちる答えにいまだに到達できません。

 

知人からもいろいろな反応が返ってきます。

 

「人間は帰属意識が強いから自分が所属するを応援するのは当然」
「アメリカ人もアメリカ選手を応援するだろう。愛国心が強いから」

 

金メダルを取った他国の選手と、銅メダルを取った日本人の選手。どちらをニュースで大きく扱うべきなのか。日本のメディアならば、銅メダルの日本人選手をより大きく扱うのが通常でしょうが、個人的には、金メダルを取った他国の選手を大きく扱う考え方があってもいいと思っています。

 

8月1日の男子ゴルフ最終日。日本の松山英樹選手はメダルがかかっていました。その試合のテレビの実況と解説は秀逸でした。

 

松山選手を応援するコメントが多いと思いきや、違ったのです。実況のアナウンサーと解説者の発言を並べます。以下は、松山選手が争っているライバル選手のプレーの直後に、ライバル選手に向けて言った言葉です。

 

「ナイスセーブ」「よく頑張りました」「らしくないミスですね」「うわぁ、惜しい」「一番心配なのはこのボールです」

 

一辺倒に松山選手に肩入れせず、ライバル選手の立場にも配慮したコメントです。爽やかな気持ちになったのは私だけでしょうか。実況のアナウンサーは、他にも、ライバル選手について、プレーの特長や、自国での評判などエピソードを紹介してくれました。

 

おかげで、他国の選手にも興味が湧き、試合全体が立体的に、楽しく見えました。松山選手は残念ながらメダルは逃しましたが、松山選手と熱い戦いを繰り広げた選手たちの顔や名前やプレーが記憶に残りました。報じ方ひとつで、これだけ変わるのだと感じました。

 

次ページ五輪はスポーツを通じた「疑似戦争」か

本連載は、岡田豊氏の著書『自考 あなたの人生を取り戻す不可能を可能にする日本人の最後の切り札』(プレジデント社)より一部を抜粋し、再編集したものです。

自考

自考

岡田 豊

プレジデント社

アメリカでの勤務を終えて帰国した時、著者は日本は実に息苦しい社会だと気付いたという。人をはかるモノサシ、価値観、基準の数があまりにも少ない。自殺する人があまりにも多い。笑っている人が少ない。他人を妬む。他人を排…

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