「承認=褒める」ことではありません
▶信頼関係を作るステップ②共通点を見つける
次に、自分と相手との間に共通点を見つけましょう。
共通点を見つけることは、部下との信頼関係を築く最も強力な方法のひとつです。
好きなことや趣味の共通点が見つかると、部下との距離が一気に縮まります。
人は自分と似たところがある相手に対して親しみを覚え、安心感・信頼感を持つからです。
初対面にもかかわらず、「出身地」「共通の知人がいる」「趣味」など共通点があると、相手に急に親近感を覚えたという経験はあるのではないでしょうか?
今、距離を感じている相手や、これからプロジェクトをともにするメンバーでいまいちつかめていない相手などには、意識的に「好きの共通点」を見つける努力をしていきましょう。
私自身、距離感を感じていた新入社員の部下と、「ノート好き」という共通点を見つけたことで、急速に距離が縮まった経験をしたことがあります。フランス製のノートの話題で盛り上がったりすることで随分と一緒に仕事を進めていくのがラクになりました。
さらに、部下ではありませんが具体的な提案をしたいクライアント候補と雑談するなかで、実は出身高校が同じだったということが判明したことがあります。
上司とは好きな美術館の話で盛り上がることが潤滑油になったり、お客様で当初なかなか話を聞いてもらえなかったりした人でも、趣味が同じとわかったら、一気に商談が進んだという経験もあります。
研修でこの「共通点を見つける」についてお伝えしたところ、仕事の現場で工夫して実践された方から、
「年に1回でもいいから、仕事以外でもそれぞれと共通の趣味などを通して接点を持つようにしてから、スタッフとのコミュニケーションが以前よりスムーズになった」
という感想をいただいたことがあります。
その方が実践されたことは、
・メンバーが写真展に出展したので見に行った
・展覧会に興味のあるメンバーと仕事帰りに一緒に出かけた
・ワイン好きのスタッフと一緒にワイナリー見学に行った
・スタッフの子どもや家族が参加できるハロウィンパーティーを開催した
といったことです。
共通点はなんでもかまいません。趣味、好きな旅先、スポーツ、お酒、よく行くお気に入りの場所、好きな温泉などなんでもいいです。
とにかくどんな小さなことでもいいので、お互いの共通点を見つけ、そのテーマで楽しく雑談することができれば信頼関係は自ずと深まります。
▶信頼関係を作るステップ③できていることを「承認」する
部下に限らず、人と信頼関係を築く上で大切なのが、相手への「承認」 です。
「承認」と聞くと、「褒めるのは苦手」「何を褒めたらいいかわからない」「今さら急に褒めたら、かえって怪しまれそう」「部下の話に賛同できないのに、それを承認していたらストレスになる」という方もいます。
実は、「承認=褒める」ではありません。
また、承認と賛同もまったくの別物です。
承認は、無理に感情を込めたり、おだてたり、称賛する必要もありません。
部下をよく観察して「できているところ」を見つけてシンプルに「これはできているよ」と「事実を指摘」するだけです。
以前、課長向けの研修で「承認」の重要性について話したところ、受講生の方から次のような感想をいただいたことがあります。
『事実を淡々と伝える』ことなら私も抵抗なく実行できました。
また、相手も極端に恐縮しなくなり、お互いに自然体でいられ、そのミーティング後、御礼のラインが届き、『承認』で部下との距離を縮めることができました」
部下を承認することができれば、「この上司は、ちゃんと見てくれている。わかってくれている」という安心感が生まれ、それが信頼関係につながっていきます。
人は自分のことを深く知ってくれている人に、自然とついていきたくなるものです。ぜひ、実践してみてください。
大平信孝
株式会社アンカリング・イノベーション代表取締役