経済成長させないと二期目はない米大統領
サブプライムローン危機を引き起こしたのは住宅ローンの証券化ですが、借金、つまり債務の証券を金融商品にして金融市場で取引させるという手法は、かなり以前からありました。
サブプライムローンを担保にした証券が、高利回りが期待できる金融商品として盛んに発行されるようになってきたのは、2001年です。2001年はウォール街がいろいろな意味で揺れました。ひとつはもちろん9.11同時多発テロ。もうひとつはITバブルの崩壊です。
そのときに誕生したのがブッシュ(子)政権です。アメリカの大統領は歴代、とにかく経済を成長させないと二期目はないと考えます。これが当たり前の話、普通なのです。景気をよくするためにどうすればいいかといろいろ考えた際に、住宅市場に目をつけた。
住宅市場をよくすればいいと。それでサブプライムローンが急に発展していきました。当時、連邦政府の住宅ローンのサポート機関で、ファニーメイ(連邦住宅抵当公庫)とジニーメイ(アメリカ政府抵当金庫)というものがありましたが、当然アメリカ政府はサポートしました。
ここが住宅市場活況に関与していきました。それで不動産価格が上がってくる。これによってブッシュ政権は景気を維持していったのです。
ある意味で政府が借金を奨励しているのですから、一般消費者は借金をして家を建てました。しかも担保になる住宅価格がどんどん上がるから、サブプライムでローンを組んでいない一般のマイホーム所有者にも、銀行はいくらでもお金を貸してくれました。
住宅価格が上がるがゆえです。これでアメリカ中に消費ブームが起きました。さらに相乗効果で皆お金を使うようになりますから、どんどんマクロ経済のパイが大きくなり、借金も増え、経済が成長する。経済が成長するから、さらに借金をして消費する……その借金のもとになったのが住宅価格です。
さらにブッシュ政権は住宅の支援策を次から次へと展開し、ファニーメイとジニーメイがまた関与していく。それでサブプライムローンはどんどん広がるから、低所得者層でも立派なマイホームを買えたというわけです。それでブッシュは再選されたのです。
立派な住宅がどんどん郊外に建って、住宅建設ブームになりました。例えば西海岸のワシントン州シアトルにウェアハウザーという大手の木材企業がありますが、当然株が上がってウハウハでした。住宅関連市場は大きいですから、建材関連企業は好況に沸いたのです。
家電製品も売れましたし、自動車も一家に二台、三台あってもいいみたいに、いろいろなことに波及していくことになりました。ブッシュ政権の住宅政策はバブルを生んだと言っても過言ではないと思います。
田村 秀男
産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員
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