米中は違った?バブルの教訓に学ばないアベノミクス挫折の本質

アベノミクスは金融緩和、財政政策、成長戦略の三本の矢を推進しました。初年度はとくに金融緩和と財政出動を積極的にやり、成功したと言ってもいいでしょう。ところが翌年は財政を引き締め、消費税の増税までしました。これは大失敗です。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

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ニューディール政策で経済成長2%超

■ニューディール政策は成功だったのか、失敗だったのか?

 

フランクリン・ルーズベルトのニューディール政策ですが、結局うまくいかなかったという説が強いようです。テネシーバレー開発公社のダム建設が象徴的に語られますが、じつは同政策でアメリカ国内のインフラがところどころで整備されていて、必要な投資が行われたという評価もあるのです。

 

例えば中西部の穀倉地帯などに行くと、ずっと平原ですから風がものすごく強い。とくに冬場はひどい。カンザス州など中西部の穀倉地帯を維持するためには、肥沃な土が飛んでいかないよう防風林が必要です。至るところに防風林があるのですが、これはニューディール政策の財政出動のおかげで設けられたのです。必要な公共投資は集中的に行われていたということではないでしょうか。

 

当時の不況に対するカンフル剤的な意味合いでは効果はなかったと言われていますが、もし何もやらなかった場合はどうだったのかという比較検証は必要でしょう。

 

あのときのアメリカ経済の成長率を見ると、じつはそれなりに成長はしています。いまだに脱することのできていない日本の慢性デフレの成長率と比較したら、圧倒的に当時のアメリカのほうがいいのです。

 

データで見ると、アメリカの大恐慌期は1930年から41年までですが、その間の年平均経済成長率は名目で1%、実質で2.1%です。日本の慢性デフレが始まった1997年度から2020年度までの24年間はそれぞれマイナス0.04%、1%です。

 

ただし、当時デフレ状態から脱出できなかったのは事実です。アメリカの経済学者にもいろいろな見方があり、例えばミルトン・フリードマンは金融を途中で引き締めたりしたからデフレを脱出できなかったのだと主張しています。

 

要するにニューディール政策で財政出動をやって、少し景気がよくなった。でもそこで金融を引き締めたため、足をすくわれたというのです。もっと通貨を発行しておけばこんなことにならなかったのだと。

 

ただ当時は通貨をどんどん発行することに対する恐れはありました。そこは考慮する必要があると思います。

 

■バブルの教訓とアベノミクスの失敗

 

ニューディール政策当時の見方からしたら、いまのドルの発行量はとんでもないことだろうと思います。リーマン・ショックのあと、一挙に4倍くらい増やしましたから。

 

これは経験が、それまで人間が営んできた経済政策の結果などが視野を広げてくれたから、できるようになったということでしょう。例えばバブル崩壊後の日本の失敗(金融は引き締める、財政出動はケチってしない、税金は上げる)を、とくにFRBが教訓にしているのは間違いありません。中国も当然でしょう。

 

たちが悪いのは、世界的に日本の失敗と評されていることを、日本が自分で直そうとしないことです。アベノミクスにしても金融緩和、財政政策、成長戦略の三本の矢を推進するとぶち上げました。初年度はとくに金融緩和と財政出動を積極的にやり、成功したと言ってもいいでしょう。

 

産経新聞特別記者、編集委員兼論説委員

1946年高知県生まれ。70年早稲田大学政治経済学部経済学科卒後、日本経済新聞入社。ワシントン特派員、経済部次長・編集委員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級フェロー、香港支局長、東京本社編集委員、日本経済研究センター欧米研究会座長(兼任)を経て、2006年に産経新聞社に移籍、現在に至る。主な著書に『日経新聞の真実』(光文社新書)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『経済で読む「日・米・中」関係』(扶桑社新書)、『検証 米中貿易戦争』(マガジンランド)、『日本再興』(ワニブックス)がある。近著に『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)がある。

著者紹介

連載日本人の給料が25年間上がらない残念な理由

本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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