アメリカの大統領は歴代、とにかく経済を成長させないと二期目はないと考えます。景気をよくするためにどうすればいいかといろいろ考えたときに、住宅市場に目をつけました。日本経済の分岐点に幾度も立ち会った経済記者が著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

国債の信用が失われると買い手がつかなくなる

■国家の信用が失われるとは?

 

財政赤字が話題になると、例として「ギリシャのようになる」と、ギリシャ危機が挙げられます。ギリシャ危機とはどういうものだったのでしょう。

 

2010年1月、欧州委員会がギリシャの統計上の不備を指摘し、財政の悪化が表面化しました。それに対してギリシャ政府は財政赤字解消のため、3年にわたる財政健全化計画を発表しました。

 

しかし、それは非常に楽観的な経済成長が前提であったため、格付け会社がギリシャ国債の格付けを引き下げ、デフォルト(債務不履行)不安からギリシャ国債が暴落しました。

 

さらにギリシャの財政赤字は対GDP5%程度とされていましたが、新政権(全ギリシャ社会主義運動)下で旧政権(新民主主義党)による財政赤字の隠蔽が明らかになり、実際は12.7%に達していたことが判明しました。

 

国家の信用が失われるとは、このギリシャ危機のような事態を指します。

 

国債の信用が失われると、買い手がつかなくなるという状態になるわけです。これにはいろいろな要因があります。戦争が起きた、国民が怠け者で税金を払わない、ギリシャのような政府による隠蔽とか、そういうその国家を信用できなくする事象です。

 

国債が買われなくなるのには、政治的な制裁ということもあります。例えば金融制裁下にある北朝鮮が国債を発行しても、誰も買いません。買ってはいけないという制裁はできるわけです。中国の国債にしても、人権問題等々の制裁で買ってはいけないことを、例えばアメリカ政府が決めたら、投資家はそうせざるを得なくなるでしょう。

 

■ブッシュ大統領の生んだバブル

 

実体経済の裏付けがないまま金融商品が上がる現象は、バブルとみたほうがいいでしょう。なぜかというと、金融市場は実体経済を抜きにして語れないというか、やはり繫がっているからです。

 

リーマン・ショックに発展したサブプライムローン危機を例にしますと、実体経済がどんどん縮小していく、あるいは景気が悪くなっていくと、住宅価格は下がっていきます。

 

住宅市場は実体経済の一部と考えてもいいわけです。住宅価格のほうはどんどん下がっているのに、それをもとにした住宅ローン証券という巨大な金融市場はワーッと膨らんでいたわけです。だから肝心のところ、つまり実体経済がペシャンと潰れてしまったら、金融経済のほうは支えきれなくなります。

 

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本連載は田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックスPLUS新書)の一部を抜粋し、再編集したものです。

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

「経済成長」とは何か?日本人の給料が25年上がらない理由

田村 秀男

ワニブックスPLUS新書

給料が増えないのも、「安いニッポン」に成り下がったのも、すべて経済成長を軽視したことが原因です。 物価が上がらない、そして給料も上がらないことにすっかり慣れきってしまった日本人。ところが、世界中の指導者が第一の…

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