事業が軌道に乗るまで資金を確保
既存事業でも新規事業でも資金繰りはキャッシュフローで見ていきます。特に新規事業の場合は、売上がゼロからスタートしますから、事業が軌道に乗るまでの資金確保が必要です。
必要資金は大きく(1)開業資金と(2)運転資金に分かれます。
(1)開業資金
開業資金とは、事業を始めるのに必要なお金のことで、大きく設備資金と諸費用にわかれます。設備資金は、事業に必要な機械やソフトウェア、備品などの導入費用のことです。
レストランであれば、内外装費、厨房機器やテーブル、椅子、レジ、空調機等が必要です。諸費用とは、開業までに準備する備品や事務用品、開業に必要な事務手続きや登記関連費用、保証金等となります。
(2)運転資金
運転資金は、事業を回していくのに必要な資金ということで、大きく変動費と固定費に分れます。
変動費は、売上に連動して増減する費用で、材料費や仕入れ費用、販売関連の消耗品や運送費等となります。
一方固定費は、売上と連動しないで固定的に発生するもので、人件費や賃貸料、水道光熱費、通信料などとなります。人件費には、給与だけでなく健康保険や年金等の福利厚生費用も含まれます。また人件費は、正社員の場合とパート・アルバイトの場合とでは大きく金額が異なります。
運転資金は、さらに次のように分類できます。
①経常運転資金……人件費や事務所費用など恒常的に発生する費用で、以下の算式で算出します。
経常運転資金=売掛金 +棚卸資産-買掛金
売掛金が増えるほど、また在庫が増えるほど経常運転資金が必要になります。
②増加運転資金……売上が増加した場合に必要となる資金で、原材料の調達や在庫確保・保管等に必要となる費用です。
③季節運転資金……ボーナスやイベントなどで特定の時期に必要となる資金です。
④スポット運転資金……一時的に仕入れが増えたり、支出があったりする際に必要となる資金です。
⑤赤字補填資金……立ち上げ当初事業が赤字となった場合、その穴埋めをするための資金です。
新規事業の場合、初年度から黒字化できれば良いのですが、当初1、2年は赤字ということもあり得るので、複数年に跨って資金計画を立てておく必要があります。通常5ヶ年程度の事業収支のシミュレーションを事前に行い、必要資金の目安を立てることをお勧めしています。
その際に見積もるのが、(1)開業資金と(2)運転資金ですが、運転資金の中でも、当初は赤字が続く場合は⑤赤字補填資金の額を見積もっておく必要があります。そして、3〜5ヶ年の期間でみて、キャッシュ残高がマイナスとならないような額のお金を予め用意しておく必要があります。
必要資金を、借入金で賄うか資本金で調達するかは、所属する会社の新規事業として行うか、独立して自前の資金で行うかによって大きく異なってきます。
会社の新規事業として行う場合は、開業資金、運転資金ともに会社が出してくれますが、独立して行う場合は、資金調達の方法を具体化する必要があります。
必要資金は、開業資金と運転資金で具体化する
井口 嘉則
株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット 代表取締役
オフィス井口 代表
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