兄からの電話…「実家に戻って介護してくれ」
「ずっと兄は特別扱いでした。でも、今回ばかりは我慢できなかったんです」
佐久間家の次女・尚子さん(仮名・46歳)は、そう静かに語ります。話の発端は、独居暮らしをする83歳の父の体調悪化。高齢になった父は膝が悪くなり、いよいよ日常生活に支障が出始めるようになりました。
そこで、白羽の矢を立てられたのが尚子さんでした。5歳上の兄・康介さんから、突然こんな電話がかかってきたのです。
「実家に戻って父さんの面倒見てくれよ。お前は独身だし、同じ市内にいるし、父さんも、それを望んでるからさ」
その言葉に、長い間静かに我慢していた怒りがあふれ出しました。
「……絶対に嫌です。お兄ちゃんは散々お父さんに甘えてきたでしょ。たくさんお金をかけてもらったでしょ。何ももらっていない私が、なぜ介護までしなきゃいけないの」
普段、内向的で大人しい尚子さんの厳しい言葉に、電話の向こうの康介さんは、しばらく絶句したといいます。
「女の子だから」「独身だから」…親と兄に怒りを爆発させたワケ
尚子さんの不満は、突然生まれたものではありません。背景には、きょうだい間での進学・経済支援の明確な差がありました。
「康介は長男だから」――親の後ろ盾を背に、兄の康介さんは東京の私立大学へ進学し、仕送りを受けながら一人暮らしをしました。一方、「康介にお金を使いすぎた」「女の子は地元で十分」と言われた尚子さんは、地元の公立大学へ進学したといいます。
その後、康介さんは東京で就職。結婚・出産、家を買ったときにも、親の援助を受けてきました。それに対して、実家と同じ市内で働き、ひとり暮らしをする尚子さんは、親からお金を受け取るようなことは一切なかったといいます。
「父も、亡くなった母も、兄が大学卒業後は地元に戻ってきてくれると願っていたんです。それを無視して兄は東京で就職。それでも、父はまだ兄を優先しています。お金をかけてもらって、自由に人生を選んで、介護も私に押しつけるなんて……」
