(※写真はイメージです/PIXTA)

OODAループは、不測の事態や緊急事態における臨機応変な意思決定方法です。このスキルが身に付いていると、不測の事態や緊急事態に直面したとき、柔軟な判断や迅速な実行が最優先されます。現場が起点となっているので、柔軟な対応が可能です。コンサルタントの井口嘉則氏が著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

緊急時はOODAループを活用する

2020年の上半期は新型コロナのせいでPDCAをうまく回せなかった企業が続出したのではないでしょか。それもそのはずです。PDCAは、緊急事態には向かない経営管理手法なのです。緊急事態に適した経営管理手法はOODAループです。

 

OODAループとは、観察(Observe)‒ 情勢への適応(Orient)‒ 意思決定(Decide)‒ 行動(Act)の頭文字をとった言葉で、元々はアメリカ空軍のジョン・ボイド大佐が提唱した方法論です。

 

大佐は、朝鮮戦争における史上初のジェット戦闘機同士の空中戦の戦いで、性能に優れたソ連・中国のMiG-15戦闘機軍に対して、状況判断・対応力の差で米軍のF-86戦闘機軍が10対1という驚くべきキルレシオ(撃墜比率)で勝利を収めた戦い方に端を発しています。

 

ボイド大佐は、OODAループを元々は航空戦に臨むパイロットの意思決定を対象としていましたが、作戦術・戦略レベルにも敷衍され、さらにビジネスや政治など様々な分野でも導入されるようになっています。

 

新型コロナ感染症対策を例にとってみると、専門家も初めてのことなので、どういった場所でどのようなふうに感染し、感染したらいつ頃からどのような症状が出るか把握し、どのような人が重症化するのかを観察(Observe)するところから始まりました。

 

そして、飛沫感染が多いことが分かると、三密を避けるという方向付け(Orient)を行いました。その上で、緊急事態宣言を発出し、出社率8割削減を推奨したり、夜の会食を減らすために飲食店の営業時間短縮等を決定し(Decide)、しばらくの間続けました(Act)。国民は不自由を強いられましたが、医療崩壊とそれに伴う死者の増加を避けるために、やむなく協力しました。

 

その結果、第一波については、比較的医療崩壊と死者数を抑えることができました。

 

OODAループは、ループなので、一回で終わるのではなく、2回、3回と回していく必要があります。新型コロナウイルス対策も第2波、第3波と続き、もうしばらくはこのOODAループ的な対応が続くと考えられます。これがインフルエンザのように毎年発生するようになると、PDCAサイクルで対処できるようになります。

 

OODAループの特徴は、不確実性が高い状況で、命令のタイプがタスク型ではなく、ミッション型(例:三密を避ける)で、タスクの性格が反復的ではなく、創発的(マスクが無ければ、手作りする等)で、対応の重点が、事前ではなく、事後的で、データは、予測ではなく、事実データ(感染者数推移グラフ等)で、行動に対する判断は上位からではなく、専門性の要求が高く(防護服着用で、隔離等)、現場判断(三密対策で工夫等)であることです。

 

ポイント
緊急事態にはPDCAではなくOODAループで対処

 

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    ※本連載は、井口嘉則氏の著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

    事業計画書の作り方100の法則

    事業計画書の作り方100の法則

    井口 嘉則

    日本能率協会マネジメントセンター

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