(※写真はイメージです/PIXTA)

新宿区内で「2室合計75,000円」の格安物件、加えて契約書内に「転貸も可能」とあったことから契約した借主。しかし、契約書を信じて民泊をはじめたところ、さまざまなトラブルが発生したことで、オーナーから「契約違反だ」と責められ、賃貸借契約の解除を求められました。貸借人に弁明の余地はないのでしょうか。賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

契約書で認められているのに解除を要求された借主

【建物借主からの相談】

私は、知り合いの不動産業者から、新宿区内の古いアパートを安く借りれるという話をもちかけられました。

2室で家賃が合計7万5000円と格安でしたので、副業で民泊をやろうと思い、この古アパート2室を借りることにしました。

契約書には、住居として使用するという目的が明記されていましたが、これに加えて「建物を転貸することを承諾する」という条項も入っていました。このため、私はこの転貸の条項があれば、民泊も大丈夫だろうと考え、契約時に、アパートのオーナーには、私が民泊をするつもりであるということは伝えませんでした。

アパートを借りたあと、民泊運営会社に委託して、このアパート2室を民泊に出していましたが、その後、利用者が間違って他の住人の部屋に入ろうとしたり、ゴミ出しのルールを守らなかったりというトラブルが度々起こってしまいました。

このため、ほかの住民や保健所からアパートオーナーに苦情や指導があったようで、私のところにアパートのオーナーから、「民泊に使用していたことは契約違反だから解除する」という通知がありました。

確かに契約時にはアパートオーナーには民泊をするということは、はっきりとは説明しませんでした。しかし、契約書には「転貸も可能」と書いてあったのですから、民泊に使用しても問題ないと思っていました。

私の主張は認められないのでしょうか。

 

本件は、東京地方裁判所平成31年4月25日判決の事例をモチーフにしたものです。

 

本件では、契約時に、物件を民泊に利用するということは明示的に合意されておらず、また、使用目的は住居として使用すると規定されていましたが、「転貸を可能」とする特約が契約書に設定されていました。

 

民泊と言うのは、いわば又貸し(転貸)をするようなものですので、

 

「転貸可能特約が設定されていれば民泊の利用は契約違反とはならないのではないか」

 

という点が主な問題となった事例です。

 

また、民泊の利用が契約違反になるとしても、賃貸借契約における契約の解除は「信頼関係破壊の法理」(契約違反の事実に加えて、その違反の事実によって貸主と借主との間の信頼関係が破壊されたと言えることが必要)が適用されるため、

 

「借主が賃借物件を民泊に使用していたことによって信頼関係が破壊されたといえるか。」

 

という点も問題となりました。

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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