「住み続けるが、更新料は払わない」と主張する借主
建物の賃貸借契約では、一般的に契約期間は2年〜3年間とされ、契約期間終了時に契約の更新をする場合には「新賃料の1ヵ月分」を更新料として支払う、という約定がなされているケースが多いです。
そのため、賃貸管理の実務では、おおむね契約期間満了の1〜3ヵ月くらい前に、賃貸人側から「契約更新のお知らせ」などと題した書面を賃借人に送付して更新意思の有無を確認し、更新希望の場合には更新契約書等の取り交わしと併せて更新料の支払いが行われるということが多々行われています。
しかし、賃貸人の管理や修繕対応等で不満を持っている賃借人がいる場合などには、当該賃借人から「更新はするけど、対応を改善してくれなければ更新料を支払わない」という対応をされるというケースもあります。
このような対応をされた賃貸人側としては、「更新料を支払わなければ契約を更新しない(解除する)」という主張をして争いたい、ということになってきます。
そのため、「更新料の不払いにより賃貸借契約を解除できるか」という点が問題となるわけです。
解除が認められるかどうかは、賃貸借契約における紛争の解釈指針である「信頼関係破壊の法理」がここでも通用しますので、
といえるかどうかにより解除の成否が判断されることになります。
この争点を巡っては多くの裁判例がありますが、今回紹介するのは、更新料2回の不払いにより解除が認められた東京地裁平成29年9月28日判決の事例です。
この事例は、月額賃料5万6,000円、契約期間2年間、更新時に更新料として賃料1ヵ月分を支払う旨定められていた建物賃貸借契約の事案で、賃借人が2回の更新時期にいずれも更新料の支払いを拒んだため、賃貸人が契約解除・建物明渡の訴訟をしたという事案です。
賃借人側は、更新料の支払いを拒んだのは「賃貸人が更新後契約書を交付しなかったこと、部屋の鍵を修理してくれないこと、共用部分の掃除をしてくれなかったことが原因であり、これらを改善してくれれば払うつもりだった」などと反論して争いました。
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