「頑張らない」働き方が正しいのか?
入居する前は「拝みます」「頼みます」と入居を懇願するも、いざ入居したとたん豹変し、身体拘束も禁止、車いすも禁止、ホーム内は安全なので、すべて本人に歩かせるような介護支援を強要し、万一、ケガをさせようものなら、損害賠償請求をするぞ、と言って足腰の立たない入居者に24時間つきっきりで面倒を見ろと強要する家族もけっして少なくありません。
多くの介護現場では、このようなことを経験し、その結果、自分たちが頑張って入居者の世話をしても、結局、家族の期待に応えることができなければ、逆に責められたり、罪に問われたりを繰り返してきました。理解できるでしょうか?
相手のことを考えて、良かれと判断して、無理してでもやったことが、逆に、自分が追い込まれることになってしまうという現実。これを経験することで、多くの介護看護職員が学んだことは、「何もしない」「頑張らない」ということが一番正しい働き方である、ということです。
したがって、責められる事情を少しでも抱えていそうな入居者には、初めから、かかわらないほうが得策である、ということを多くの介護看護職員は実践しているということだと思います。
さらに、最近の傾向として強く出ていることは、入居者が要介護度いくつか? という点です。ご存じの通り、要介護1よりも要介護5のほうが、老人ホーム(特養や介護付き老人ホームの場合)が受領できる介護保険報酬は、多いという事実があります。もちろん、これは要介護1よりも要介護5のほうが介護支援の手数が多くなるから当たり前、という論を背景に整備された制度です。
しかし、現実は、この論の通りにはなっていません。要介護2の徘徊する認知症の入居者と要介護5の寝たきりの入居者とでは、どちらが手がかかるかは説明するまでもありません。
しかし、老人ホームがもらえる介護保険報酬は要介護5の寝たきりの入居者のほうが多いのです。入居者の要介護度によって、入居がスムーズに進むケースと進まないケースがあるという事情が、おわかりになられたと思います。乱暴な言い方をすれば、要介護2よりも要介護5のほうが一人当たりの単価が高いので、収益を考えた場合、一部屋しか空いていなければ、要介護5の入居者を選ぶのが普通です。
このあたりのことも多少理解しておくことは、正しい老人ホーム選びには必要だと思います。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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