(※写真はイメージです/PIXTA)

日本とアメリカで大きく異なる「不動産取引」。アメリカの不動産取引の特徴的な部分のひとつとして“エクスローを介しての取引”が挙げられますが、具体的にはどんなものなのでしょうか。本記事では「日米の不動産取引の違い」について、シアトルで不動産エージェントとして活躍している女性・森田さんとともに、アメリカ不動産コンサルティングを展開する村上年範氏が解説していきます。

アメリカの取引が「合理的でスピーディー」なワケ

村上 登記に関してもアメリカは特徴的ですよね。「電子登記」になっているかと思います。

 

森田 売買契約が成立するとエクスローがオープンしますが、エクスロー側で書類などをすべて預かって、「タイトルカンパニー」という登記をしたり権利関係のサーチなどをする会社に提出します。

 

アメリカではほとんどの場合、エスクローとタイトルカンパニーは同じ会社の中に分かれた状態であります。そのタイトルカンパニーが一括で登記の手続きを行うので、いちいち集まったり、日にちを合わせて何かをしたりすることは全くありません。

 

決済の日は普段通りに仕事をしていただいて大丈夫ですし、わざわざ決済のために移動したり予定を開けたりする必要はなく、電話一本の報告で終了となります。

 

村上 日本にはハンコの文化が残っているので、不動産取引でもハンコを押す場面が非常に多いです。一方でアメリカの場合だと、クラウドサインを活用しているので買主と売主が直接会うことも、エージェントがエスクローに直接会うこともありませんよね。

 

森田 その通りです。クラウドサインのおかげで合理化が図られて、書類関係はすべてオンラインでやり取りされます。時間の節約にもなっています。

 

契約書のサインもその後の銀行関係の書類もオンラインでできるので、いちいち契約書のためや決済のためにどこかに出向く必要が全くなく、旅行先や飛行機内ですら、アプリ一つでサインできてしまうほどのスピード感があります。

 

唯一出向かなければならないのは、売主が「この物件を買主に譲渡します」という書類を提出する際です。この場合は必ず本人がサインをしなくてはなりません。

 

ローンを組む方もローンの書類には本人が必ずサインをしなければならないのですが、こちらは代理人委任状というものを書けば第三者に委託することができます。その代理人委任状についても、最近では公証人がオンラインの向こう側にいて認証してくれるというシステムができているので、本当にどこにも行かなくてもいい時代になってきています。

 

村上 だからこそ日本人もアメリカの不動産に関与できる環境なのかなと思います。取引のスピーディーさにもかなり繋がりますよね。

 

アメリカの不動産取引の場合、MLSに上がってから売れて決済するまでの時間が体感で日本の場合よりも3倍くらい早いような気がします。

 

ディール(取引)のスピードはどうなっていますか?

 

森田 最近では14日クロージング、最長でも30日決済が一般的です。代金の支払いもオンラインでできますし、エージェントもなるべく面倒な手続きを無くして「パパッとクロージングしちゃいましょう」という様子です。

 

今はマーケットが激しく売り手市場なので、買主もなるべく早くクロージングさせようとします。クロージング期間が長いと買主側にとっても売主側にとってもリスクが高くなってしまいます。気が変わらないうちにという意味でも、なるべく早く決済したいのです。

 

村上 となると、イメージとしてはオファーを入れて決済するまで30日くらいということですね。日本だと2~3ヵ月はかかるイメージがあるので、まさに3倍速ですね。

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