(※写真はイメージです/PIXTA)

海外不動産投資は、もはや一部の富裕層だけの選択肢ではなくなりました。しかし国や地域ごとに所有ルールや税制が大きく異なり、誤解や準備不足から大きな損失につながることも。制度や管理体制、送金や税務リスクまでを総合的に把握し、将来の出口戦略を踏まえた投資判断が不可欠です。代表的なエリアごとの注意点を5つに整理し、失敗しないための基本を解説していきます。

いまや一般投資家にも身近になった「海外不動産」

「海外不動産投資」は富裕層の特権というイメージがあったのは過去の話。いまや1,000万円台から物件を購入できるケースも増え、一般投資家にとっても現実的な選択肢となっています。

 

しかし、日本人が海外で不動産を購入する場合、購入する国から見ると、私たちは「外国人」に該当します。国や地域によって「外国人に認められているルール」は全く異なり、誤解や準備不足から失敗する例も少なくありません。

 

今回は、アメリカ・ヨーロッパ・東南アジアを含めた代表的なエリアを対象に、「外国人が不動産を購入する際に注意すべき5つのポイント」を実務者視点で解説します。

国によって大きく異なる「外国人の不動産所有ルール」

当然のことながら、すべての国で外国人が自由に不動産を購入できるわけではありません。

 

アメリカ・マレーシアなどは比較的オープンで、外国人が土地付き不動産を個人名義で所有することが可能です。

 

一方、イギリスでは物件の多くが「借地権(Leasehold)」での取引となり、土地自体の所有権(Freehold)を取得できるケースは一部に限られます。期間制限や地代支払いの条件も含まれるため、実態としては長期賃借権に近い形です。

 

東南アジアでは、外国人による不動産取得に制限がある国が多く、制度面で注意が必要です。

 

タイでは外国人による土地所有は認められておらず、購入可能なのはコンドミニアムで全体の49%までという制限があります。ベトナムやインドネシアでは、土地は国有または所有不可とされ、外国人は「使用権(一定期間)」を得るにとどまります。フィリピンでは土地の所有自体が禁止されており、法人で所有する場合でも60%以上が現地資本である必要があります。

 

さらに、一部の国で最低投資金額(ミニマム)が定められており、不動産取得に伴うVISAや永住権制度と連動して制限が設けられているケースもあります。

 

このように、国ごとに「所有権の性質」「土地と建物の扱い」「個人・法人経由取得の可否」「ミニマム投資額の有無」などの違いがあるため、単純な利回り比較ではなく、制度的な制約と将来的な出口戦略まで見据えた上で判断することが重要です。

見落とされやすい税制と登記制度の違い

税制の違いは、最も見落とされがちでありながら、最も大きな損失リスクにもなり得るポイントです。

 

たとえばアメリカでは、外国人が不動産を売却する際にFIRPTA(外国人投資家不動産税法)により、譲渡価格の15%が源泉徴収されます。最終的には申告で調整されるものの、一時的なキャッシュアウトが大きいため注意が必要です。

 

一方、東南アジアでは譲渡益課税や印紙税の計算が複雑であることが多く、例えばタイでは名義変更時に印紙税や特別事業税が発生し、実質の税負担率が5〜6%になることも。マレーシアでは不動産譲渡益税(RPGT)が導入されており、保有年数に応じて課税率が変動します(短期保有で最大30%)。

 

また、多くの国では申告義務があり、日本との租税条約の適用判断も必要です。さらに、登記制度や「所有者」の法的定義も国ごとに異なるため、契約書の言語や法的表現の違いによるトラブルも発生しやすいのが実情です。

 

こうした背景から、現地側の税理士・弁護士と日本側の専門家が連携する体制を最初から設計しておくことが非常に重要です。

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