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90代の母、亡くなってはじめてわかった資産の全容
今回の相談者は70代女性の三浦さんです。90代の母親が亡くなり、相続について相談したいと、同居する娘さんと一緒に相談へ来られました。
90代で亡くなった母親の相続人は、今回訪れた長女の三浦さんと、二女にあたる三浦さんの妹の二人です。三浦さんは結婚していますが、二女は独身で母親と同居しています。
三浦さんの父親は15年ほど前に亡くなっていますが、母親が長生きしたため、相続人の2人が70代と、高齢になってからの相続でした。
亡くなった母親はプライドが高く、娘たちにも安易に預金額を教えるようなタイプではありませんでした。三浦さんと妹も、母親が認知症を発症した1年前に、ようやく資産状況の全体を把握したということです。
数年前、母親が80代後半になってから、三浦さんと娘家族は、母親の身の回りの世話をするために、母親と妹が暮らす実家へ合流し、同居するようになりました。
三浦さんの夫は、これまでどおり自分の家で引き続き暮らしており、三浦さんの住民票もそちらにある状態です。
同居を始めたのには、きっかけがありました。高齢となった母親と妹がリフォーム業者に付け込まれ、高額なリフォームを契約する寸前までいったのです。途中で三浦さんが気づき、事なきを得たかたちでした。しかし、今後も同様のリスクがあると判断し、母親からも歓迎され、同居に踏み切ったのです。
同居に際し、母親から不動産の贈与を受けるが…
三浦さんの母親は複数の不動産を所有していました。
三浦さんの母が暮らす実家には2棟の建物があり、母屋には母親と妹が、離れには三浦さんと三浦さんの娘家族が住んでいます。
また、築古ではありますが、貸家も2棟あり、いずれも入居中です。
三浦さんが同居を決めた際、母親の自宅の土地と建物は、精算課税制度の特例枠2,500万円に入ったため、贈与を受けることにして、名義を三浦さんにしました。また、所有する貸家2棟の建物も、同様に贈与を受けました。
相続発生時の母親の財産は、相続時精算課税制度を使って贈与を受けた自宅の土地や貸家の建物2,500万円、貸家の土地3,000万円と、預金1億3,000万円です。基礎控除4,200万円を引き、相続税の概算は2,890万円となりました。相続時精算課税制度を利用した贈与財産は相続財産として加算して、相続税を払います。節税対策にはならないのです。
贈与を受けずに貸家の建物が母親名義であれば、土地は18%減、小規模宅地等の特例を使うとさらに50%減になりますので、相続税は2,473万円でした。しかし、贈与を受けたため、相続税416万円を多く払うことになって、贈与は節税対策にはならなかったのです。
なぜなら、「土地=母親」「建物=三浦さん」となれば、土地は使用貸借として自用地扱いとなり、貸家建地にならず、小規模宅地等の特例も使えないのです。
建物贈与は税金の負担がないとしても、相続税の負担が大きいため、慎重に比較して決断するのが望ましいところです。
あるいは、母親がもう少し早く預金の額を教えてくれていれば、生命保険に入り、非課税枠を使ったり、子どもや孫に現金贈与したりするなどの対策が取れたのではないかと思われます。
もっとも、三浦さんは娘家族が同居していますので、今回、貸家の土地を三浦さんが相続すれば、三浦さんの相続時には、小規模宅地等の特例が使えます。
「妹とよく相談して、次は節税対策をしておきたいです」
三浦さんは肩を落として話されました。
土地と建物の名義が違う場合は、賃貸住宅であっても貸家建付地になりません。建物だけ贈与を受けると家賃が入るメリットはありますが、特例が使えず節税効果もないため、慎重な判断が必要です。
※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
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曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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