(※写真はイメージです/PIXTA)

首尾よく創業融資を引き出すことができても、小さな会社や個人事業主はとかく目の前の業務に忙殺されがちで、事業が軌道に乗るまでの半年間は赤字や資金ショートに陥りやすいもの。そこで資金調達アドバイザーの田原広一氏がおすすめしているのが、信用金庫に試算表を送付することです。当初の目標の進捗度合をチェックしつつ、融資を受けられるチャンスが増え、金融機関からの信頼感を得られるというメリットがあります。創業後の半年間を乗り切るコツを見ていきましょう。

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試算表の提出は「“どんぶり勘定”対策」としても有効

金融機関への試算表提出は、放漫経営に陥らないための“自身にプレッシャーをかける”材料にもなります。

 

特に手元資金が手薄になりやすい創業から半年間は、対応の遅れ、ちょっとした気の緩みが命取りになりかねません。とはいえ、創業時は日々の仕事に追われ、売上が思うように伸びていなくとも改善策が後手に回りがちです。一人でお金の管理もしていると、私的な用途で会社からお金を引っ張り、社長貸付金や仮払金がふくれ上がったり、使途不明金が増えたりといった“どんぶり勘定”に陥るケースも散見されます。

 

こうした放漫経営を防ぐために、“第三者の監視の目”を入れる仕組みとして、毎月、あるいは2~3ヵ月に一度、金融機関に試算表を提出することを課すわけです。

 

融資を申込む先の担当者に会社の数字を見せるとなれば、「計画に沿って、毎月売上を伸ばしていこう」「ここまで売上を達成しないと利益が出ない」とモチベーションの源になります。従業員とも数字を共有することで、社内の士気を高める材料にもなります。独立はゴールでなく、あくまでもスタートに立ったに過ぎません。創業後も気を緩めることなく、会社の数字をしっかり見ていくことが安定的な経営基盤の構築につながるのです。

 

■融資を受けるたいなら「経費を入れ過ぎない」ことにも注力

融資担当者に試算表を提出し、お金の管理をきっちり実践していくうえでは、創業当初から「経費を入れ過ぎない」ことにも注力しましょう。

 

節税のために、無闇に経費を計上し、利益を最小限にしたり、赤字にしたりするケースも見受けられますが、融資を受けたいと考えるならばNGです。

 

法人の場合、役員報酬の設定も慎重さが求められます。額の変更は基本的に年1回となり、売上がなく払えずに未払いになったとしても、役員報酬に対する源泉所得税を納付しなければならず、個人で払う所得税や住民税にもはねかえってきます。

 

またいくら利益が上がっていても、借入金の返済が利益を上回れば黒字倒産のリスクも高まります。

 

以上のポイントに注意し、創業1年(期)の決算は少しでも黒字で着地することを目標に、月々の収支をプラスにしていくことを心掛けていきましょう。

創業融資として引き出したお金は「極力使わない」

次の融資につなげる方法として、公庫からの借入を、信金の口座に着金するノウハウをご紹介しました(【⇒関連記事:公庫で創業融資を受ける…「次の融資」が有利になる「入金先」】)。

 

しかし、せっかく評価アップにつながる預金残高を積み上げたところで、すぐにお金を引き出し、預金が底を突いてしまったとしたらどうでしょうか。

 

プラスに作用するどころか、「売上が想定より伸びず、資金繰りに困っている」、あるいは「金遣いが荒い。計画性がない」というマイナス評価につながってしまいます。

 

「現金を潤沢にもち、余裕がある」会社にこそ融資をしたいというのが金融機関のスタンスです。だからこそ、創業融資で資金を引き出したら、設備資金は別として、運転資金はなるべく使わず残しておくことが大事なのです。

 

決められた返済はスケジュールどおりに実践していくことは大前提として、売上、利益をきちんと出し、最低でも返済込みで毎月トントン、つまり収支をプラスマイナスゼロ、できれば少しプラスぐらいにもっていければ、融資を受けるごとに借りたお金が手元に残っていきます。

 

預金残高が貯まってくると余裕があるように錯覚し、財布の紐もつい緩みがちですが、「借りたお金を極力使わない」ようにすることも、万一の際の備えにつながります。

 

現預金を着実に積み増していくことは、潰れにくい経営基盤の礎となるとともに、次の融資の審査、与信枠のアップにもつながっていきます。

 

私も創業して6年で合計3億4200万円を借入したものの、2億円以上が手つかずで預金口座にあり、その資金的余裕が次の融資にも有利に働く状況が続いています。

 

もし、お金があると使ってしまうというならば、定期預金や定期積金にして貯蓄しておきましょう。融資を受けたお金をムダ遣いしない仕組みをつくるとともに、定期預金や定期積金を契約することで融資を受けやすくなるという好循環が生まれます。

 

創業時に、半年間程度は売上ゼロでもしのげる程度の運転資金を準備しておくことも大事です。ビジネスの成功は、お金の使い方でも左右されます。融資の段取りとともに、準備した資金の使い道も計画立てておきましょう。

 

 

田原 広一

株式会社SoLabo 代表取締役

 

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※本連載は、田原広一氏の著書『賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

資金調達のノウハウが知りたい経営者、必読!  起業の喜びも束の間、会社の存続をかけ資金繰りに頭を悩ます日々…。創業から1年以内に約3割の企業が廃業するといわれているなか、生き残るために必要な融資の知識とその活用…

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