資本金1000万円以下なら「創業3年目までに法人化」がおトク。会社の成長ステージに合わせて考慮すべき“選択肢”【融資アドバイザーが解説】

資本金1000万円以下なら「創業3年目までに法人化」がおトク。会社の成長ステージに合わせて考慮すべき“選択肢”【融資アドバイザーが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

金融機関から「融資をしたい」と思われる会社であり続けるには、どうすればよいのでしょうか。本稿では「法人化」「税理士の活用」に焦点を当てて、社長が心得るべきポイントを見ていきましょう。資金調達アドバイザー・田原広一氏が解説します。

法人化するなら「創業3年目を迎える“前”」がおトク

■資本金1000万円未満なら、法人化によって消費税が「最大4年間」免除

事業を継続していくうえでは、成長ステージに合わせて、考慮すべき選択肢も増えてきます。

 

例えば、最初は個人事業主でスタートしたとして、法人化するべきか。するならば、いつ踏み切るか。

 

私のお客さまの場合、飲食店などBtoCの店舗ビジネスの方が多いため、個人事業主でスタートする方が大半です。融資の審査は、個人であろうと法人であろうと、どちらが有利、不利ということはありません。むしろ、融資を受ける際には、個人のほうが手続きが簡単で、タイミングも計りやすいため、大企業を相手にするようなBtoBビジネスでなければ、ムリに最初から法人にする必要はないと思います。

 

ただし、創業から2~3年を経ると、法人化が焦点に入ってくるタイミングが訪れます。例えば、売上が1000万円以上になると、消費税の納税義務が発生しますが、創業後2年間は売上にかかわらず消費税の支払いが免除となります。よって、1年(期)目で売上が1000万円を超した場合、創業3年(期)目からは消費税課税事業者になり、消費税を払う義務が発生します。

 

しかし、創業3年を迎える前に個人事業主から法人化すれば、資本金1000万円未満という条件付きで、売上にかかわらずさらに2年間は消費税免除の特典が受けられます。つまり、法人を活用することで、最大4年間、消費税が免除となるわけです。

 

そのほかにも、法人にすると社長も会社から給与を受け取る立場になるため、「給与所得控除が使える」「決算の時期を自由に設定できる」などのメリットが生まれます。

 

一方で、赤字でも「法人住民税の均等割を納める必要がある」、社員がいなくとも「社会保険の加入が義務付けられる」、さらに社員がいる場合は、会社負担(半額折半)も増えます(個人事業の場合、社員5人以上で要加入)。

 

創業後に融資を受ける場合は、決算後が最大のチャンスになります。

 

法人設立には、相応のコストと時間、手間がかかります。創業時には個人で申し込んだとして、2年目、3年目はどうするか。数年先を見据え、法人にして得られるメリット、デメリットも考えながら、タイミングを外すことなく準備を進めていくことが何より大事です。

顧問税理士を依頼すべきか否か

■「優秀な税理士」がいれば融資時の信用アップにつながる

会社の成長ステージに合わせて考えるべきもう一つの選択肢が、顧問税理士を依頼すべきか否かです。

 

お金のことはプロに任せ、本業に集中したいと考えるならば、個人事業主、法人にかかわらず創業時から依頼するのも一つのやり方でしょう。しかし、帳簿の記帳や申告などの手間が省ける一方で、売上に関係なく固定費として顧問料や決算料がかかってくるため、売上が安定的でない創業時から依頼するのはリスクもあります。

 

日本には「申告納税制度」というルールがあり、その制度に則り、納税者自らが納税の申告を行えば問題はありません。

 

確定申告のやり方は税務署で相談すれば教えてくれますし、便利な会計ソフトもあります。事業を始めたばかりで時間があるならば、自分で記帳や決算、申告をするのも会社の数字への感度を高めるうえでも勉強になるでしょう。

 

では、本業が忙しくなってきて、“餅は餅屋に任せたい”と考えるならば、どういう基準で税理士を選べばいいのでしょうか。税金の計算や申告を代理でしてもらうというだけなら、誰に頼んでも同じなのではと思われるかもしれませんが、実はそうともいい切れないのです。

 

一般的に税理士の仕事といわれるのは、「税務書類の作成」「税務代理」「税務相談」の3つになります。これらは税理士の資格がなければできない独占業務です。

 

しかし、事業を成功させるには、その時点でのお金の管理や節税対策をすればいいというものではなく、数年先を見据えて物事を判断していく必要があります。

 

先にも挙げたような「消費税の課税事業者になるべきか」「社長の借入金をどう処理するか」「資本金をいくらにするか」など、経営においては決断が迫られるさまざまな課題が発生します。

 

また、今ならば「この選択肢を選ぶのが正しい」と判断しても、5年先を考えるならば、「違う選択肢を選ぶべし」となることもあります。

 

例えば、目先の節税を考えるならば「積極的に経費を計上すべし」と考えても、融資を考えるならば、「経費をなるべく入れずに利益を出し、きちんと税金を払うべし」と判断するべきです。決算の時期についても、なるべく預金残高が多い時期を狙い、大きな設備投資を控えているならば、「今年は1ヵ月前倒しにしよう」というチョイスをするべきときも出てきます。

 

こうした会社の成長ステージや経営スタンスに応じて、長期スパンで個々のニーズに合わせた相談に乗ってくれる税理士ならば、「顧問料を払っても依頼する価値あり」という判断もできると思います。

 

しかし、経営の右腕として期待していたら、「疑問があっても相談しにくい」「税務以外のことを依頼すると、追加料金がかかりそうで不安」ということでは、相談すべきチャンスを逃がし、重要な経営判断を間違えるリスクも高まります。

 

「税金の計算だけをやってくれればいいのか」あるいは「幅広く会社の数字についてアドバイスも欲しいのか」など、自分が税理士に何を求めるかを明らかにすることを大前提に、融資アドバイザーであり、かつ税理士事務所で働いていた経験ももつ立場として注意点を申し上げるならば、「税理士だからといって、会社のお金のことにすべて精通している人ばかりではない」ということです。

 

特に、税金についてはプロであっても、融資に関しては実績も経験値があまりないがために、クライアントが求めるがままに節税ばかりに注力する税理士もいます。法に則った事務処理、対応はできても、実態に合った助言をフレキシブルにできるかも個人差があります。

 

また、特定の保険会社の代理店業務を兼ねている税理士も多いため、手数料目当てだけではないとしても、節税策として保険の加入を勧めるようなケースもあり得るのです。

 

「税理士の先生がおっしゃることだから」と疑うこともなく、節税に励んだ結果、融資を受けたいときに受けられないというリスクも発生します。

 

融資のサポートを受ける際にも、認定支援機関を謳っていたとしても、実際に融資サポートの経験値がどの程度あるかは、事前に確認しておくのがベターでしょう。

 

持続的に融資を受けるうえで、税理士を依頼するポイントとして、とある金融機関の融資担当者からこんな話を聞いたことがあります。

 

それは、「優秀な税理士をつけると、信用アップにつながる」ということ。金融機関からの信用を獲得するコストだと考えて、しっかりとしたプロに税務申告をやってもらうべきだといいます。

 

最初のうちは個人でやるのも、青色申告会や組合のサポートを受けるのもいいでしょう。しかし、自分で申告しているうちは、どうしても自己流となり、本業の忙しさにかまけて“どんぶり勘定”ともなりかねません。金融機関の担当者としても、数字の信ぴょう性にどうしても疑いの目を向けざるを得ないというケースも出てきます。

 

融資をエンジンに、会社を成長させたいと考えるならば、ある段階で自分に合った税理士を検討し、自己流から脱することも必要不可欠な“投資”と考えるべきでしょう。

 

 

田原 広一

株式会社SoLabo 代表取締役

 

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※本連載は、田原広一氏の著書『賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

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田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

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