潰れる会社、生き残る会社の決定的差は「集客力」
事業を継続していくうえで、最も必要な“力”は何か。
技術力、企画力、発想力など、さまざまな才能をもつに越したことはありませんが、いちばん大事なのは集客力ではないかというのが私の考えです。いくらいい商品、サービスを生み出しても、世に知られなければ意味がありません。
いくらすばらしいビジネスモデルを構築できても、お客が来なければ“宝の持ち腐れ”で終わってしまいかねないのです。
私は税理士有資格者ではありますが、今や資格をもっていても、黙ってクライアントがついてくるような時代でもありません。士業のような比較的恵まれているように映るビジネスでも、“集客”こそが命綱となっているのです。
私の会社では、融資のサポートがメイン業務となっていますが、「創業計画書」の作成などのお手伝いをする際に、特に注力しているのがビジネスモデルを確立すると同時に、創業後も売上を上げ続けるための集客の仕組みを一緒に考え、支援することです。
創業計画書を基に融資の審査が行われる場合も、設備資金は見積もりどおりとしてブレが少なくても、掲げた売上目標が立つかどうかは本人の頑張り次第です。
さらにいうならば、創業時に挙げた見込み客、既存客に加え、新規顧客を増やし続けていかない限り、いつか事業は停滞していきます。
しかも、少子高齢化の時代にあって、市場そのものが縮小していくなか、限られたパイの奪い合いは今後も熾烈さを極めていくことが予想されます。
激しい生存競争を生きぬくには従来のやり方、今、成功している集客法、営業スタイルに満足するのではなく、顧客候補との新たな接点を増やし続けていく必要があります。つまり、集客の選択肢を増やしていくことが何より大事なのです。
開業から時間が経つほどに、「もうやれることはやり尽くした」「自分の成功パターンはコレだ」などと、“昔取った杵柄”で自分流のスタイルに固執してしまうような人もいますが、こうしたあきらめや慢心こそが命取りです。
「今のやり方でいい」と創意工夫を放棄した時点で、途端に会社が傾くことはなくても、ゆっくりと業績は右肩下がりの一途をたどり、倒産リスクに少しずつ近づいていくことを覚悟するべきです。
万策尽きて、コンサルタント会社などが開催する集客セミナーなどに新しい道を求める人もいます。セミナーに行くこと自体は悪いことではありませんが、“他人がうまくいった方法”が自分にも当てはまるとは限りません。そのまますべてを真似るのではなく、参考程度にするべきでしょう。
最新テクノロジーを活用した集客にもチャレンジ
また、昨今、集客の選択肢を増やすうえでは、最新のテクノロジーを活用したデジタルツールの活用も欠かせません。従来の集客メディアと比較し、コストが低く、成果が見えやすいデジタルツールは、小さな会社や個人が大手と肩を並べていくための強力な“武器”にもなり得るものです。
私の会社でも、集客のために複数の自社サイトを運営していますが、運営サイト数、コンテンツ量を増やし続け、SEO対策も実践。そのほか、FacebookやTwitterなどのSNS、リスティング広告、YouTubeやTikTok(ティックトック)といった動画やメール配信など、さまざまなデジタルツールを駆使し、会社の認知度アップに注力しています。
Webを活用した集客モデルに関しては、SEO関連の会社から営業を受けることも多いのですが、「イケるかもしれない」と思った施策については、あえてリスクを取ってトライしてみることにしています。
なぜなら、今、効果が出ている集客手法やうまくいっているビジネスモデルが時代の変遷とともに衰退する可能性も大いにあるからです。
Airbnb(エアビーアンドビー)やUber(ウーバー)が従来のホテル業界やタクシー業界のあり方を大きく揺るがしたように、今後も新たなイノベーションを活用したビジネスの“破壊者”は、続々と登場してくるでしょう。
融資でお世話になる金融機関においても、ITやAIを活用した融資審査の効率化が進むなど、金融(Finance)とIT技術(Technology)を融合させた「FinTec(フィンテック)」の取り組みが加速しています。審査の基本は変わらないとしても、スタイルが変わっていくことも想定に入れつつ、私の会社でも時代の変化にしっかりとキャッチアップしていく必要があると考えています。
融資によって、余剰資金をもっておく必要性は、未知の分野に思い切って投資をするためでもあります。
もちろん、効果測定がまだ明確でないビジネスモデルへの新たなトライアルには、投資がムダになってしまうリスクもつきまといます。しかし、リスクを取ってでも、新たな集客法を増やしていかない限り、気づいたら時代の波に乗り遅れてしまうことにもなりかねません。
私も特に創業1年目は、さまざまな広告施策にトライし、ムダになってしまったものも少なくありません。しかし、これも創業時に800万円の融資を受けられたからこそのチャレンジです。成功すれば継続的に活用すればいいですし、失敗しても授業料ととらえれば、次に活かすことが可能です。
そのためには、実践するしないに関係なく、常に新しい情報に触れ、アンテナを張っておく感度も必要です。決算時など、金融機関の担当者と直接会ってコミュニケーションを取ることをお勧めするのは、情報入手のうえでも大事なプロセスと考えているからなのです。
田原 広一
株式会社SoLabo 代表取締役
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