公庫で創業融資を受ける…「次の融資」が有利になる「入金先」【資金調達アドバイザーが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

これから開業する会社や個人事業主がまず当たるべき金融機関は、ズバリ「日本政策金融公庫(以下、公庫)」です。数ある金融機関の中でも借りやすいこと、担保・無保証で利用できる創業融資制度があること、公庫から借入して事業を成功させれば、その後、民間の金融機関からも借りやすくなることなど、たくさんのメリットがあるからです。ただし、次の融資を有利にするには、押さえておくべきポイントがあるのです。賢く融資を受けるための秘訣を見ていきましょう。

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入金先は「信用金庫、信用組合」が正解

公庫は、融資専門の金融機関であり、ほかの銀行と違ってお金を預かる機能がありません。よって、公庫でお金を借りることができた場合、他行の入金先の口座を指定しなければなりません。

 

実はこの選択が、次の融資につながる重要なカギを握ることになります。

 

公庫以外の民間の金融機関には、都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合がありますが、入金するだけなら「どこの金融機関でも同じでは」という考えは間違いです。例えば会社員時代に給与振込口座に指定していた都市銀行を選んだとしたら、融資を有利に運ぶうえでは得策とはいえません。

 

本連載で掲げる資金調達の理想的なロードマップは、創業2年で2~3行の金融機関から融資を受けることです。

 

その目標を達成するには、創業時に公庫から融資を受けたら、すぐに次の融資先をどう選ぶかを念頭に、準備を進めていくことが肝心です。

 

では、先に挙げた民間の金融機関のなかでどこを選ぶべきでしょうか。会社員時代は身近な存在だった都市銀行も、いざ事業資金の融資となると小さな会社の創業期に支援してくれる可能性は極めて低くなります。地方銀行も、近年は創業融資に力を入れ始めていますが、借りやすさとしては、まだまだこれからというべきでしょう。

 

公庫から借りたお金の入金先として選ぶべき正解は信用金庫や信用組合です。民間の金融機関でも、地域密着型で、小さな商店や事業主、会社の融資に積極的な信金、信組を選ぶのが王道なのです。

信金、信組からスムーズに融資を引き出すには?

■口座開設し、借り入れた融資を預金残高に積み上げる

では、どうしたら信用金庫や信用組合から融資をスムーズに引き出すことができるのかというと、ここが口座開設と密接に絡んでくるのです。信用金庫を例に解説していきましょう。

 

まず考えていただきたいのは、金融機関にとって何が大事なのかです。端的にいえば、信金の担当者は何をしたら喜ぶかです。大きくは次の4つが挙げられます。

 

●預金残高の増加

●新規貸付先を獲得する

●定期預金や定期積金を契約する

●メインバンクになる

 

ノルマのある営業マンにとって、これら一つでも実践してくれる顧客を獲得できれば、成績アップにつながります。つまりこれらを実践し、営業マンの好印象を得られれば、将来の融資に向けて金融機関の担当が頑張ってくれる可能性が高まるのです。

 

必ず公庫の入金先を指定しなければならないのですから、これを機に信用金庫に口座開設をしましょう。そして、公庫から借入れた数百万から1000万円単位の預金残高を積みます。こうして評価を上げ、次の融資につなげるわけです。

 

さらにいうならば、公庫の融資に成功したことで、信金からも公庫の審査を通過した会社という評価を受けることができ、いざ融資を申し込んだ場合も審査が通りやすくなることが期待できます。

創業融資に積極的な信金、信組を見つけるには?

ただし、信用金庫や信用組合ならば、どこでも創業融資に力を入れているというわけではありません。

 

創業融資は、倒産リスクも高いため、融資に積極的ではない信用金庫や信用組合も少なくありません。日本の民間の金融機関は“担保主義”ともいわれるように、土地などの担保がなければ融資をしない傾向もまだ見られます。

 

では、創業融資に力を入れている信用金庫や信用組合をいかに探すか。参考となる指標の一つに「選択ベンチマーク」があります。

 

2016年9月、金融庁が新たに金融機関を評価する指標として「金融仲介機能のベンチマーク」という制度を導入しました。

 

ベンチマークは「共通ベンチマーク」と「選択ベンチマーク」に分かれており、共通ベンチマークはすべての銀行が達成しなければならない項目です。「取引先企業の経営改善や成長力の強化」「取引先企業の抜本的事業再生等による生産性の向上」「担保・保証依存の融資姿勢からの転換」などの5つが挙げられています。一方、選択ベンチマークは、約50項目から、金融機関自らが「自行で力を入れたい項目」を任意に選択することができます。「メイン取引先のうち、経営改善提案を行っている先の割合」「地元への企業誘致支援件数」などが並ぶラインアップのなかに「創業支援先数(支援内容別)」という項目があります。

 

共通ベンチマークのなかにも「金融機関が関与した創業・第二創業の件数」というのが入っているため、どの金融機関もある程度は創業融資に取り組まないといけないというのが金融庁の方針ですが、加えて選択ベンチマークとして「創業支援先数(支援内容別)」を選んでいれば、取り組みへの本気度が分かるというわけです。

 

個々の金融機関のベンチマークの取り組み、姿勢についてはホームページなどで公開されているケースもありますので、一度調べてみるとよいでしょう。

 

■公庫に「提携している信用金庫」を紹介してもらうのもアリ

もっと簡単な方法は、融資を受けた公庫に「提携している信用金庫があれば紹介してください」とお願いすることです。

 

公庫は、多くの信金と連携し、創業融資に関して勉強会なども開催しています。そのなかでも懇意にしている金融機関、支店、担当部署・担当者がいれば、紹介してもらうわけです。

 

もし希望している融資額が大きいときは、公庫と信金の両方から融資を受ける協調融資という方法もあり、ケースによっては二行で協調融資を推進してもらうという選択肢を取ることもできます。

 

民間の金融機関の注意事項としては、中小企業や個人事業主が融資を受ける際は、基本的に「保証付融資」を利用することとなります。特に創業時は銀行から直接貸付を行う、いわゆる「プロパー融資」が受けられることはありません。

 

公的な保証人として設立された信用保証協会の審査を通らなければ、いくら特定の金融機関の担当者と懇意になろうと融資は受けられません。自治体や商工会などへの申込み、審査を経て、金融機関をあっせんしてもらう「制度融資」についても同じです。制度融資の場合、金融機関に直接申込むより、金利の優遇を受けられるケースもありますが、手続きも自治体、金融機関、保証協会と三者に及ぶためやや複雑になります。

 

こうした手間を経ても、公庫に加え、もう一つの金融機関とのパイプができれば、ダブルで後ろ盾が期待でき、会社が倒産するリスクも減らすことができます。盤石な経営基盤をつくるためにも、創業融資を受けた時点で安心するのではなく、口座開設一つとっても、戦略的に考えることが肝要なのです。

口座開設手続きの際にチェックすべき6つのポイント

1. 事業の実態があるか

登記上の場所がバーチャルオフィスだったりすると審査に落ちるリスクあり

 

2. 法人の住所と金融機関の店舗が離れていないか

口座開設をする先は、本店所在地に近い店舗を選ぶのが王道

 

3. 代表者の信用情報にキズがないか

代表者個人の信用度が低いとマイナス評価に

 

4. 事業内容が明確か

事業内容が多過ぎたり、内容に一貫性がなかったりすると説明を求められることも

 

5. 資本金の額

資本金があまりに低いと審査に影響する恐れあり

 

6. なぜその金融機関を選んだのか

金融機関を選んだ理由を合理的に説明できたほうがベター

 

【図表】金融機関への口座開設手続きに必要な書類

「着金先の信用金庫」でさらに融資を受けた事例

一般的に税理士は、月額課金の顧問契約が増えていけば安定した売上と利益が期待できるビジネスモデルなので、融資には興味をもたない人が多い印象です。積極的な広告出稿やマーケティングで集客しようと考える人も少ない傾向にありますが、創業後なるべく早く軌道に乗せたいなら、短期集中のマーケティングは大きな効果が期待できます。

 

税理士法人の設立を準備中だった後藤さん(仮名)は、創業直後は一定の投資をすることでスピード感をもって成長したいと考え、私の会社に相談に訪れました。設立してすぐに日本政策金融公庫に融資を申込み、700万円を引き出すことに成功しました。

 

公庫で受けた融資は、金融機関の口座に振り込まれます。後藤さんは創業支援にも積極的な地域密着型の地元信用金庫で法人口座を開設し、公庫融資の振込先口座として指定していました。

 

公庫の融資が着金した直後に、その信金に対しても融資を申し込みました。目的としては、運転資金として事務員の雇用や広告宣伝費に充てるとしましたが、まずは少額でいいのでその信用金庫と取引を始めたいことを熱心にアピールしました。

 

その結果、後藤さんはその信金から300万円の融資を引き出すことに成功しました。こちらは信用保証協会の保証付融資です。これで後藤さんは公庫と信用保証協会の融資の、両方の実績を得ることができました。将来、より大きな資金が必要になった際に、双方から追加融資を受けやすくなります。

 

創業直後の早い段階で融資の実績をつくり、着実に返済して信用を積み重ねていくことで、将来のプロパー融資への道も開けやすくなり、成長を加速させることができます。日本ではとかく、コツコツお金を貯めることばかりを美徳とする風潮がありますが、ビジネスを志す人はお金を借りることで信用を貯めていくほうがはるかに役立つのです。

 

田原 広一

株式会社SoLabo 代表取締役

 

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株式会社SoLabo 代表取締役 税理士有資格者

平成22年8月、資格の学校TACに入社し、以降5年間、税理士講座財務諸表論講師を務める。

平成24年8月以降、副業で税理士事務所勤務や広告代理事業、保険代理事業、融資支援事業を経験。

平成27年12月、株式会社SoLabo(ソラボ)を設立し、代表取締役に就任。お客様の融資支援実績は、累計4,500件以上(2021年7月末現在)。

自身も株式会社SoLaboで創業6年目までに3億円以上の融資を受けることに成功。実体験を踏まえたアドバイスは多くの起業家から支持されている。

著者紹介

連載独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

※本連載は、田原広一氏の著書『賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

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