本州メーカーの北海道進出で、自社の在り方を問い直す
「経営者は、一歩先を照らし、二歩先を語り、三歩先を見つめるもの」
本田宗一郎さんの右腕として大活躍した藤沢武夫さんが残した言葉です。本州メーカーの急伸を目の当たりにして、私はこの言葉を思い出し、経営者としての未熟さを痛感しました。
先を見る経営者であれば、本州メーカーがやがて進出してくることを予想できたはずです。二歩先、三歩先に目を向けていれば、変化の兆しに気づくことができます。潜在的だったリスクを察知し、対策することもできます。
そもそも北海道経済圏によって守られているとはいえ、永遠の安全圏はありません。市場は常にオープンで、常に競争相手が入って来ます。我々はたまたま外部環境に恵まれていただけです。
私はそのことを忘れて、参入障壁の中でのんきに、社長として十分に働いているようなつもりになっていたのでした。売り上げが減り、その原因が本州メーカーの進出によるものだと知って、ようやく参入障壁という壁の向こう側の世界を知ることになったのです。事業環境は変わります。変化に応じて、事業モデルも変えなければなりません。それが、この時の学びです。
この時にもう一つ学んだことがあります。それは、本州メーカーの商品はよくできているということです。
例えば、本州メーカーの豆菓子は、包装の袋にジッパーが付いています。このひと工夫があるだけで湿気を防いだり、開封したまま置いておいたり、少しずつ食べたりできます。我々は新商品開発に没頭し、菓子の味や食感には集中していましたが、改善できる点はほかにもたくさんあるのだと気づきました。
売り上げが減っていることについて、私はそれまで心のどこかで、環境のせいにしていました。自社に原因があるのではなく、中国製バターピーナッツや、本州メーカーのせいだと思っていました。
しかし、それは間違いだったのです。外部環境の影響もありますが、本質的には、相場の3分の1の価格でバターピーナッツを作る中国企業の努力や、味、見た目、食べやすさなどの点でさまざまな工夫をしている本州メーカーの努力が勝っていたことが理由です。
真因は自分たちの力不足です。日々忙しくしていると「一生懸命やっている」「頑張っている」と考えがちですが、目の前のことにばかり集中し、視野が狭くなります。
本州メーカーの進出をきっかけに、自社のあり方を問い直すことになりました。
池田 光司
池田食品株式会社 代表取締役社長
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