夫の異変を「あえてスルー」した妻
由美子さん(仮名・58歳)は、30年以上専業主婦として生きてきました。夫は会社員として外で働き、収入を得る。妻は家事と育児を一手に引き受け、家庭を回す。役割分担は明確でしたが、夫婦関係は決して対等ではありませんでした。
夫は「俺が養っている」という意識が強く、家の中でも強い態度を崩しません。由美子さんが意見を口にすれば、「誰のおかげで生活できていると思っている」と返される。家計の管理も、資産の状況も、すべて夫の管理下にありました。
離婚が何度も頭をよぎりました。しかし、息子が自立するまでは現実的ではありませんでした。自分に収入がない状態で離婚すれば、その後の生活が立ち行かないことは明らかだったからです。
そんな年月を過ごし、息子は大学を卒業し独立。夫婦2人暮らしになってから数年、夫が55歳の時。ある異変が起きました。夫がスマートフォンを肌身離さず持ち歩き、帰宅時間が不規則に。休日も「用事がある」と外出することが増えていったのです。
そして、由美子さんは夫のスマートフォンの画面に、見知らぬ女性の名前が表示されているのを目にします。それは、家族に向けるものとは明らかに違うものでした。
さらに夫は、自分の行動が由美子さんに察せられていることを、どこかで気づいているような素振りを見せることもありました。それでも、何も言わない由美子さん。夫にとって由美子さんは、「自分に文句を言えない相手」でした。家のことは完璧にこなし、感情をぶつけてくることもない。その沈黙は、夫にとって都合のよいものでもあったのです。
ですが、その沈黙の裏には、由美子さんの冷静な判断がありました。
