元気を失っていく従業員たち、理由がわからず焦る社長
本州メーカーの進出が目覚ましかった2000年、バターピーナッツの生産を大幅に減らした年以来、2度目の赤字を経験することになりました。再び赤字脱却の戦略を練らなければなりません。売り上げが短期間で3分の1になったり半減したりする経営はリスクが大きく、その点でも事業戦略や事業モデルを根本的に見直す必要があります。
また、社内においても、このころから私はある異変を感じるようになりました。それは、従業員たちの元気がないということです。
「赤字のせいか……」
「忙しさのせいか……」
当初はそう考えました。実際、赤字は心理的に重しになりますし、日々の業務も多忙でした。
忙しくなった原因は、メーカー向けのOEM(Original Equipment Manufacturerの略で、メーカーのブランドで販売する商品を受託生産する仕事のこと)にあります。このころの売り上げを支えていた数少ない仕事の一つで、技術力と安定的な生産体制を評価され、少しずつですがまとまった量の仕事が入るようになっていました。
メーカー向けのOEM仕事は薄利多売です。しかし、赤字脱却のためには少しでも利益を増やす必要があります。そう考えて、私も営業担当者もたくさん仕事を開拓していました。結果、機械だけでなく、従業員もフル稼働に近い状態となっていました。
この状態が数年続き、売り上げ面では、2005年に7億円まで回復し、再度黒字に戻りました。相変わらず売り上げの増減が大きいことが気がかりでしたが、私はほっと胸を撫で下ろしました。
ただ、赤字から脱却できたあとも、相変わらず従業員の表情には覇気がありません。表情だけを比べるなら、バターピーナッツの仕事がなくなり、工場のペンキ塗りをしていたころのほうが生き生きとしているように見えました。何か原因があるはずです。疲れているのか、やりがいが感じられないのか、仕事がつまらないと感じているのか、理由は分かりませんでしたが、対策を考えなければなりません。
そこで私は、従業員に積極的に話しかけ、声を聞くように心がけました。密かに「どこでも会議室の取り組み」と名付け、社内の廊下でも工場の隅っこでも、あらゆる場所で従業員に話しかけました。ちょっとした雑談が問題解決のヒントになります。
経営者が気がつかないことを、現場が知っているということはよくあるものなのです。
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