(※写真はイメージです/PIXTA)

老後は「子どもが時々顔を見せてくれる暮らし」を思い描く人も少なくありません。しかし現実には、親子関係の距離が年齢とともに広がり、連絡が途絶えてしまうケースもあります。経済的な不安、価値観の違い、生活スタイルの変化――さまざまな要因が重なり、関係がこじれることもあるのです。年金生活に入った夫婦が、子との断絶をきっかけに住まいと暮らしを見直した事例を追います。

「もう電話もしないでくれ」突然のメッセージ

「最初は、何かの冗談かと思ったんです」

 

そう話すのは、関東地方で暮らす斎藤さん夫妻(ともに69歳・仮名)です。ある日、長男から届いたLINEには、短くこう書かれていました。

 

「悪いけど、もう電話もしないでくれ」

 

理由ははっきり書かれていませんでした。直前に、老後資金の不安について相談の電話をしたことが、息子の負担になっていたようだと後からわかったといいます。

 

「援助してほしいと言ったわけじゃないんです。ただ、不安で話を聞いてほしかっただけで……」

 

既読はついたものの、その後返信はありませんでした。

 

斎藤さん夫妻の年金収入は、2人合わせて月約14万円。夫は自営業期間が長く、厚生年金がほとんどありませんでした。

 

「国民年金が中心なので、どうしても少ないんです」

 

総務省『家計調査(2024年)』によると、高齢夫婦のみの無職世帯の平均消費支出は月約25万円台で、実収入を上回る水準となっています。多くの世帯が、貯蓄の取り崩しを前提に生活しているのが実態です。

 

夫妻も例外ではありませんでした。築30年の分譲マンションに住んでいましたが、管理費と修繕積立金、固定資産税の負担が重くのしかかっていました。

 

「住み続けるのが怖くなったんです。大規模修繕の話も出ていて」

 

最終的にマンションを売却し、地方都市の〈築42年の賃貸アパート〉へ転居しました。家賃は月4万8,000円です。

 

長男は会社員で、家庭を持っています。

 

「息子は息子で、住宅ローンや子どもの教育費で精いっぱいだったんだと思います」

 

厚生労働省『令和6年 国民生活基礎調査』でも、児童のいる世帯の64.3%が「生活が苦しい」と感じている実態が示されています。現役世代にも余裕はありません。

 

「親としては頼るつもりはなくても、“将来どうするの?”と言われているように聞こえたのかもしれません」

 

金銭の相談は、受け手にとって“援助要請の予告”のように感じられることがあります。

 

 

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