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「値引きは麻薬みたいなもの」という理由
■値引きすることなかれ、絶対に
こんなことを言うと、「いくらなんでも純粋主義に走り過ぎではないか」と思われるかもしれないが、値引きは麻薬みたいなもので、そこに依存したからといって、状況が好転するわけではない。実際、「もっと、もっと」と深みにはまっていく。
今年、セールを1日やったら、来年は2日連続で開催したくなる。販売目標と株主の期待が重くのしかかるなか、今月「1個買ったらもう1個プレゼント」の企画を打てば、来月には「1個買ったら2個プレゼント」にエスカレートする。そういうものだ。私自身、そのプレッシャーに追いまくられていたことがある。だが、改めて言いたい。値引きはダメだ。
第1に、値引きをしたからといって、後日、それに見合う売り上げ増につながることはまずない。たとえば、10%の値下げをしたら、仮にがんばって20%多く売っても、しょせん本来得られたはずの利益にしかならない。そんな売り上げ増は不可能なだけでなく、そんな売り方をしているうちに、顧客には「そのうち、また値引きするさ」と期待を抱かせることになる。
「上得意客に報いたい」とか「おもてなしの気持ちを表したい」という理由であっても、値引き策は使ってはいけない。値引きをすることで、「普段は高値を吹っかけているのか」と見られても仕方ないし、せっかくの得意客が売買だけの関係になりかねない。おまけに値引きは、商人としての腕前やブランドとしての商品を安っぽく見せてしまう。
むしろ、大切な伴侶のように、顧客との関係を捉えるべきだろう。「顧客の暮らしに何らかの価値をもたらすには、どうしたらいいのか」と考えるべきだ。価格と価値のバランスをとることに関して、もっと広い視野で可能性を模索するのである。仮に商品に高めの価格を設定しても、その分、顧客を魅了する手段があればいいのだ。
競合他社は、徹底的な安値を狙って消耗戦を繰り広げている可能性がある。今ではすっかり有名になった高級ビール「ステラアルトワ」の「reassuringly expensive」(「頼もしいくらい高い」の意)という広告コピーを思い出さずにいられないが、「それなりに払うけれど心強い、頼もしい」と思われるブランドをめざすべきである。
■アドベンチャー精神を発揮せよ
パンデミック後の小売りの世界では、頂点に君臨する怪物企業や急成長のミニマーケットプレイス企業が、あくなき欲望を満たそうとうろうろしている。そのなかで生き残ることができる小売業のクラスがあと2つある。「ありきたり」店と「したたか」店だ。あなたはどちらを選ぶだろうか。
もし、上の図表左側のほうが自分の考えに合っているとしたら、軌道修正が必要だ。逆に右側のほうが自分の考えに近いと思ったら、未来は明るい。私たちは、あなたのような経営者を待っていたのである。
ダグ・スティーブンス
小売コンサルタント