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「ポイントカード」が知られたくない真実
■会員に「なっていただく」のではなく、会費を請求せよ
ロイヤリティ(愛着心・信頼)を重視してポイントカードなどを導入している業界には、あまり外部に知られたくない不名誉な秘密がある。実はポイントプログラムは、得意客を増やす効果がないのだ。各種調査によれば、小売業界のポイントカード会員と非会員の行動に関して、店に対するロイヤリティの差はごくわずかだという。
実際、ポイントカード制度の多くが促進するのは、ブランドに対するロイヤリティでも何でもなく、専門家の間で指摘される「特典に対するロイヤリティ」に過ぎない。要は、買い物客が割引目当て、特典ほしさで反応しているというわけだ。だが、私が考えるポイントカード制度の問題点は、ブランドと顧客の間でごく限られた一方通行のやり取りになってしまっている点だ。やり取りといっても、特典、ポイント、購入くらいしかないのだ。
たとえば、夫婦がそんな要素だけでまともな相思相愛の関係が成立するだろうか。
「あなた、今月は浮気もせずにまじめにがんばってくれたから100ポイントね。ゴミを出してくれたらボーナスポイントよ。ポイントが貯まっているので、夕食か映画に交換する?」
こう考えると、入会無料のポイントカード制度が一番威力を発揮するのは、食品や航空、ホテル、クレジットカード、ガソリンなど、競合との差別化が難しい分野だろう。要するに、ヒルトンとシェラトンという2つのホテルチェーンの最大の違いは、どちらがポイントをたくさんくれるかに尽きるのだ。
そこに問題がある。小売業者は、単に客が「惰性」で利用しているだけなのに、ロイヤリティと勘違いしているのだ。客は、とりたてて忠誠心も愛着もないのだから、最後まで浮気せずにとどまってくれるわけではない。とどまってくれているのは、競合に乗り換えたところで、体験内容に大した差はないからだ。
ほとんどのポイントカード制度には、もう1つの問題がある。それは「ポイントカードが、体験自体と本質的には無関係」という点だ。要は、ポイントカードで得られるポイントは、ショッピングの体験とは切り離されて、別物になってしまうのである。なぜなら、その日のショッピングという体験が終わらなければ、ポイントは手に入らない。
たとえば、私はスターバックスに行くたびに不思議に思うのだが、オーダーを聞かれ、(商品受け渡し時に呼び出すための)名前を聞かれ、ようやく会員カードアプリがスキャンされる。最初にアプリをスキャンしておけば、私を名前で呼ぶこともできるし、「いつものでよろしいですか」といった気の利いた応対もできるではないか。
そうすれば、私がいつもオートミールクッキーを一緒に買っていることもわかるはずで、「クッキーもいかがですか」と一言添えることも可能だ。