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ビッグデータVS会員制度の「ベストデータ」
結局、私のポイントカードは、店での体験とまるで無関係ということがわかる。それでは本末転倒だ。そこで強く推奨したいのが、有料会員制の採用である。
有料会員制は、さまざまな面でポイントカード制度に勝る。何よりも有料会員制は、本当にブランドや店舗に思い入れのある顧客を浮かび上がらせる手段になる。たとえば、アマゾンプライム会員は、非会員に比べてアマゾンでの年間消費額が3.5倍以上に達する。会員制の威力を生かしているブランドは、アマゾンだけではない。
2016年、高級家具・インテリア販売の「レストレーションハードウェア(Restoration Hardware)」が総合戦略を見直し、販促策としての値引きを一切取りやめて、有料会員制を導入した。会員になると、全商品が毎日会員価格で購入できるほか、年1回のインテリアデザイン相談など目に見えるかたちの特典も多数ある。
同社が“値引き症候群”から抜け出したまではよかったが、売り上げが低下したことから、会員制移行を疑問視する声が多数上がった。だが、2018年には好調な業績を達成し、売り上げの95%が有料会員による購入であることを公表して、同社に対する批判の声を封じ込めたのである。
また、会員制には、はるかに有意義な交流も期待できる。会員にしてみれば、自分だけの個別化されたやり取りにブランドが優先扱いで応じてくれる。だから、自らの行動に関する情報をかなりオープンにブランドに提供しても惜しくない。ブランドが顧客についての深い情報を獲得すればするほど、顧客が味わう体験も充実していく。だから顧客はさらにデータを差し出すようになり、信頼の好循環が加速していくのだ。
さらに、有料会員制は、継続的な収益の源泉にもなる。一方、ほとんどのポイントカード制度は、バランスシートの上では負債である。この本質的な違いゆえに、各社はあの手この手でポイントカードの価値に制限をかけたり、あれこれ条件をつけたり、ときには価値自体を引き下げたりする。かたや、有料会員制を用意している小売業者は、制度を拡充して、付加価値を高める施策を常に模索する傾向がある。
取扱商品や客層は関係ない。魅力的な有料会員制戦略を打ち出し、一番の得意客向けにこれまで以上におもてなしの精神を発揮した体験を提供すべきだ。
頂点に立つ怪物企業がビッグデータで群を抜いているというのなら、こちらは会員制を駆使して「ベストデータ」を獲得しようではないか。